パリ+リスボン街歩き(8) ルーヴル(続きの続き お気に入り)。

ルーヴルの多くの作品の中、好きなものは幾つもある。中で、単に好きだということを越え、ここが好きだという場所がある。実は、その作品は素晴らしい、好きである、と言っている人は多くいる。私は作品もさることながら、近辺も含めそれがある一帯が好きである。何かホッとする。またルーヴルに戻ってきたな、という気がするお気に入りの所。

ドゥノン翼の1階、前古典期のギリシャ美術の並ぶ所を歩いて行くと、前方に2階へ上がる階段が見えてくる。
だんだんと近寄って行くと、その像が見えてくる。階段の上に。「サモトラケのニケ」だ。

両翼を広げた「ニケ」、海の勝利を表す女神。その像が、近寄るに従って徐々に大きくなっていく。
この感覚が何とも言えない。場というか、時間、空間というか、その像を包む周り一帯の状況感覚が。

「サモトラケのニケ」、下から階段を上がる毎、その人々を包みこむ。

「サモトラケのニケ」、紀元前190年頃のもの。「ミロのヴィーナス」より100年ばかり古いものだが、同じくヘレニズム期のギリシャ彫刻。エーゲ海の北東、サモトラケ島の聖域を見下ろす高台から、多くの破片として発見された、という。
軍船の舳先に立ち、翼を羽撃かせて飛び立とうとする瞬間を見せている。なお、10数年前のジェームズ・キャメロンがアカデミー賞を取った映画「タイタニック」では、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの二人が、タイタニックの舳先でこの「サモトラケのニケ」の様子を模していた。長いスカーフを使って。
この「ニケ」の像のある一帯が好きだ、お気に入りだ、という理由は、あと一つある。それは、「サモトラケのニケ」のすぐ右側の部屋のとっかかりにある。

これだ。
ボッティチェリのフレスコ画、「若い婦人に贈物をするヴィーナスと三美神」。私は、この作品も大好き。

1480年から1483年の間に描かれたというから、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ラ・ジョコンダ、モナ・リザ」が描かれる20数年前に描かれたものである。

この”三美神”の顔つき、まぎれもなくボッティチェリの描く顔。
「サモトラケのニケ」へ至る階段からボッティチェリのフレスコ画が掛かる付近一帯、何やら不思議な空気が漂っているようで、ルーヴルでのお気に入りの場。