春場所千秋楽。

たしかに、鶴竜の大関取りの場所ではあった。しかし、今場所13番が必要だ。
それは、ちょっとキツイだろう。今場所は11〜2番をあげ、次の5月場所で11〜2番を加え、直近3場所の合計勝数33にする。それが妥当なところではないか。多くの相撲ファン、そう思っていたであろう。私も、そう思っていた。
むしろ今場所は、把瑠都の綱取りの話題が先行していた。その確率の方が高いのじゃないか、と。
把瑠都の綱取り、途中で沈んだ。今の把瑠都、備わっているのは”体”のみだ。”心”と”技”が不足している。他の大関連中よりは可能性はあるが、綱取りなんて、まだまだ早い。
しかし、鶴竜は、白星を積み重ねていった。白鵬を破り、把瑠都を屠り、敗れたのは、稀勢の里のみ。千秋楽を迎えた今日まで、13勝1敗、優勝争いの単独トップを走る。

幕内土俵入りの今日の鶴竜。
今場所、毎日観ていたわけじゃないが、半分ぐらいはTV観戦していた。鶴竜の土俵入り、いつもこのようなもの。地味と言えば、地味な力士。表情の変化は、常にない。

上位陣との対戦はすべて終わった鶴竜、千秋楽の相手となったのは豪栄道。
豪栄道、今場所は調子がいい。今日までに11番を挙げている。

鶴竜、豪栄道に張り差しで両差しを許し、寄りきられる。鶴竜、完敗だ。
鶴竜、稀勢の里にも、一気の寄りで完敗した。144キロの鶴竜、軽量力士とは言えないが、幕内力士の平均体重を下まわっているのじゃないか。少なくとも大きな力士ではない。一気の攻めには弱い。今後の課題である。
ついでながら豪栄道だ。
豪栄道、お前もそろそろ、三役へ定着しなければならないのじゃないか。まずは三役へ定着し、その上、つまり大関を目指す。豪栄道という力士、そういう素質を持っている。鶴竜と同じように。鶴竜との違いは、相撲に対する生真面目さ。
豪栄道も、鶴竜と同じような真面目さ、真摯な態度で土俵に対することができれば、と思っている好角家は多くいる。今がそうではない、と言っているのではない。信念の貫徹、諦めない心だ。鶴竜は、愚直に追い求めて手に入れた。豪栄道、お前はどうだ、とけしかけたい。

豪栄道に完敗、引きあげる鶴竜の背中。
どのような男であろうとも、そのすべてを語るのは、その背中。

優勝決定戦に備え、支度部屋で四股を踏む鶴竜。
なお、鶴竜の右肩の後ろ、黄色いタオルを肩にかけた力士が写っている。彼は、鶴竜を破った豪栄道である。たまたま決定戦になったから映された映像である。面白い。

白鵬が、本割りで把瑠都を破り、鶴竜と13勝2敗の同星となった。優勝決定戦となる。

白鵬、外四つではあるが、鶴竜を土俵際まで追いつめる。
鶴竜、よく残った。うっちゃるかと思った。

だが、上手投げを食い、鶴竜は敗れる。


その直後の鶴竜。
表情をさほど表さないクールな男だが、さすがこの時には、敗れた悔しさがその表情に表われている。

優勝決定戦で勝った後、床山に髪を直してもらう白鵬。
さすが白鵬ではある。その光景に、来場所ぐらいからは鶴竜の地味な映像が混じっているかもしれない。
いずれにしろ、来場所からは6人の大関が並ぶ。その中で、抜け出るのは、いったい誰なのか。
鶴竜、型を持っている。ひょっとして、次の綱取りのトップランナー、鶴竜であること、充分に考えられる。