一本松(続き)。

おどろおどろしい九相図と、マックスここまで、これ以上は無理、と思われるご自身のアイメーキャップによって、メキメキと人気作家となった松井冬子、先週木曜のNHKエル・ムンドにもゲスト出演していた。
松井冬子、生物としての女の痛みこそ美しい、と考えているフシがある。もとより、九相図自体、グロテスクといえばグロテスクである。死した人が次第に腐敗し、ついには白骨化し、土に還る、というものであるのだから。酸鼻なさまを讃美する、と言ってもおかしくはない。
松井冬子の作品、シュールと言えばシュール。ハイパーリアルと言えばハイパーリアル。美にせよ醜にせよ、その度合い強まる。

5日前の夜、NHKエル・ムンドに出てきた松井冬子、黒っぽいアイメーキャップを施していた。これ以上進めるとパンダになってしまう、という一歩手前で止めた、というアイメーキャップ。
さすが、芸大で博士号を取った理性と感性は生きている。これが生み出す彼女の美貌が、若い女性たちの関心の的なんだそう。
女性は、そうか。しかし、男は、こうだ。右側の男は、アンドレア・ポンピリオ。この番組を仕切る男。時折りこの時間に見ているが、この男、なかなかのキレ者である。
そんなことより一本松の話だ。
松井冬子、チャリティーで、陸前高田の一本松を団扇に描いたそうだ。

その作品。
一本松が描かれている。その後ろには、低いが富士山のような山が見える。
陸前高田の一本松、海沿いにあるのだが、撮る位置によって後ろに写るものは異なる。入江の海であったりもするが、その向こうの半島であったりもする。この絵は、向こうの半島の低い山が描かれている。
竹下夢二の≪立田姫≫が、頭に浮かんだ。
やや縒れた一本松を、腰をやや捻った女性に置きかえると、後ろに富士山のような山もあり、夢二の”立田姫”になる。
松井冬子は、竹下夢二のことなど、露ほども思っていないであろう。しかし、団扇に一本松を描くという限り、すべては日本、一本松の日本人ということに立ちかえる。