一本松。

地震、津波、原発事故、桁外れの大震災に見舞われた日本、昨年、その日本を救ったものが二つある。なでしこジャパン、なかんずくそのキャプテンの澤穂希と、陸前高田の一本松だ。
彼ら(彼女らか)、打ちひしがれた日本を力づけてくれた。希望を灯してくれた。両者とも。
今、澤穂希は、体調を崩している。キャプテンも譲った。先日のアルガルベ杯も欠場。しかし、澤抜きのなでしこジャパンは、FIFAランク1位のアメリカを破り、ランク2位のドイツともあわやの熱戦。澤穂希への依存がなくなる前兆かもしれない。そうかもしれない。でも、昨年の澤穂希は、大震災後の日本人を力づける希望の光であった。
陸前高田の一本松もそうだ。ことある毎に出てきて、日本人を元気づけてくれた。
今月8日の朝日新聞朝刊の紙面一部を複写する。

大震災の少し後の日、暑かった夏の日、9月12日は仲秋の名月だ。今年の元日、そして、掲載日の前日。
紙面に載せられた陸前高田の一本松の写真は、よりしばしばであったように思われる。何らかの節目節目で、奇跡の一本松の写真が掲載された。
陸前高田の高田松原、江戸時代から300年前後にわたり、防砂林、防潮林としての役割りを担ってきた。昭和になってからは、景勝地としての役割りも担わされていたようだ。
日本百景、東北十景、日本の名松100選、白砂青松100選、日本の渚100選、その他諸々。7万本の松林だから。
7万本の松の内、ただ1本だけが残った。不思議だ。とても不思議。
”奇跡の一本松”などと言っているが、私は、その言葉以上に不思議な感じを持つ。ただ1本なんだから。しかし、そのただ1本の松も、その内、遠からず倒れる運命にある。現在でも、臨死状態にあるそうだから。
澤穂希の体調は心配だ。陸前高田の一本松も。しかし、この両者、十分すぎるほどの力を与えてくれた、多くの日本人に。