何故に凄いか。

中国が凄い国なのは、何も国土が大きいからだとか、経済成長率がどうこうだとか、軍事力が強大であるとか、ということでは、もちろんない。
先週、正式には未だ国家のトップではない習近平のアメリカ訪問にも、オバマ以下の政権幹部や議会の指導者たちが、次から次へと応対していたのは、政治、経済、特に軍事面での思惑。これからの世界、オレたち2国で仕切っていかねばならないから、と言うこと。何も、中国が凄い国であるから、と言うことではない。
昨日で幕を下ろしたが、東博で「北京故宮博物院200選」展があった。

北京の故宮から、”歴代皇帝のコレクション、空前の規模で一挙来日!”と謳っている。

東博正門前の看板。いつものようにチャリンコが並んでいる。
それよりも、金アカに白ヌキの文字が目に入る。”中国が世界に誇る至宝、ついに国外へ。 神品「清明上河図」”が、1月24日まで展示される、という告知。
これが人気を呼んだ。なにしろ”神品”だ。
私が行ったのは1月半ば、まだ「清明上河図」が展示されている時であった。しかし、観ることはできなかった。これのみの待ち時間、4時間だった。4時間は待てない。諦めた。中国国内でも、この”神品”の展示はほとんどないようで、9年前に上海で展示された時には、5〜6時間待ちの列ができたそうだ。上野で4時間待ちは仕方なかろうが、私にはきつい。

正月の東博。今年は、開館140周年だそうである。
この「北京故宮博物院200選」展も、日中国交正常化40周年と東博の140周年に合わせた特別展。

”故宮”展のポスターに使われているこの建物、”乾清宮”である。歴代皇帝の寝室であり執務室でもある。
故宮、明の永楽帝から、清のあのラストエンペラー・宣統帝溥儀まで、24人の皇帝の居城である。べらぼうに広い。建物の数は、700余、部屋の数は、10万近くあるそうだ。もちろん、世界中にこんなバカでかい王様の居城はない。”紫禁城”と呼ばれ、英語表記では、”The Forbidden City”とも言われる。まさに、一般の世からはかけ離れ、禁じられた特別な場所だ。
ところで、国共内戦に敗れた蒋介石は、台湾へ逃げた。その時、蒋介石は故宮から選りすぐりの宝物を持ち出し、台湾へ持ち去った。その数60万余、と言われる。今、台北のその名も同じ”故宮博物院”にある。
私は、台北の故宮博物院には、一度しか行ったことがない。それも30年以上前。まだゴルフをしていたころ、淡水でのゴルフへ行った。3〜4日のゴルフ旅行、1日抜けだし、故宮博物院へ行った。凄いものが展示されていた覚えはある。しかし、それがどのようなものであったのか、細かいことはまったく憶えていない。30年以上前のこと。
しかし、北京の故宮博物院へは、何度も行っている。北京へ行く度。でも、故宮ではその建物に圧倒され、そこのある品々にはさほどの注意が向かわない。だから、今、北京の故宮には180万点を超える宝物がある、と言われても、そうなのか、と思うのみ。
4時間待ちの「清明上河図」は観なかったが、他の展示は観た。
紀元前十数世紀の青銅器から、書跡、文人画、陶磁器、染織、その他さまざまな故宮の文物、素晴らしい。驚くべきもの。故宮、今まで、その広さと建物にばかり関心がいっていたが、少し改める必要があるようだ。
軍事力や経済力なんてこととは別次元。中国の文化力、やはり凄いんだ。日本も含めアジアの国々、その文化の大本は、何のかの、どうこう言っても、やはり中国。好き嫌いなんてことも、別次元。

清朝の第六代皇帝・乾隆帝。
満州族の正装・朝袍を身につけている。
清朝は、満州族の王朝だ。少数民族の満州族、中国全土を支配した。中でも乾隆帝は優れた皇帝、周辺諸国を平定し、強大な中華帝国を作った。それと共に、文化の面にも力を入れた。国というもの、軍事力のみでは成り立たない。文化国家でなくっちゃ。
乾隆帝の統治する中国、そういう国だったのだ。

乾隆帝大閲像軸。
清に宮廷画家として仕えたイエズス会宣教師・カスティリオーネが描いた。ヨーロッパの君主風の乾隆帝。

中国の主流は漢族。満州族は少数民族。モンゴル族も朝鮮族も西域の民も、中国の少数民族。中国という国、そういうことで成り立っている。多くの問題はあるが。
それはともかく、今は措く。
これは、「乾隆帝文殊菩薩像」。乾隆帝がチベット仏教の庇護者となり、菩薩王として描かれている。いわば曼荼羅。中国の王、すべての王となるのが必定、という感覚か。
それにしても、何が凄い、何故に凄いといっても、故宮はやはり凄い。中国はひとつ頭抜けていること、これは違いない。
ならば、尖閣だとか、南沙諸島だとか、周辺諸国とのいざこざなんていう小さなことには、力を入れないでもらいたい。ちっぽけなことには。
歴史を知れば、中国は凄い国なんだから。