ヨコハマトリエンナーレ2011(9)。

この部屋に入った時、作品がどこにあるのか、暫く解らなかった。

この人は何かを見ているようだ。しかし、どこにあるんだ。

少し歩いていると、あった。
天井から床まで、薄くて細いテープが張られている。見る角度によって、見えたり見えなかったりする。よく見ると、一面に張られている。ジルヴィナス・ケンピナス作『五番目の壁』。
しかし、何が”五番目の壁”なのか、よく解らない。天井から床まで張られている数多くの薄くて細いテープが、壁なのか。四方の壁に次ぐ壁、という意なのか。いや、テープ自体も作品ではあるが、それが張られたこの部屋自体も作品であろう。なんともよく解らない作品だ。

この人たちの前にも、天井から床までのテープが見える。
それよりも、この人たち、作品を踏んでいるのじゃないか。白と黒で描かれた。気がつくと、私自身も踏んでいた。マズイ。

床一面、このような絵柄が描かれている。
しかし、床一面は、おかしい。どうやって歩けばいいのだ。どこを歩いても、踏んでしまう。係の人に聞いた。
「それは作品ではありません。床です」、という答えが返ってきた。床か、やはり。天井から床まで張られたテープより、不思議なマチエールの床の方が、よほどアートっぽいんだが。