ヨコハマトリエンナーレ2011(3)。

今回のヨコハマトリエンナーレの特徴のひとつは、コンテンポラリーアートと横浜美術館の所蔵作品とのコラボ。
だから、階段を上がってすぐの部屋には、ブランクーシの彫刻が目の前に立ち、その周りにルネ・マグリットやマックス・エルンストの作品がかかっている。
こちらの壁面は、このよう。

手前は、ポール・デルヴォーの『階段』、その左は、若くして死んだ石田徹也の『屋上へ逃げる人』。シュールの巨人と何年か前に死んだ若い作家が並んでいる。共通項は、”階段”ということか。
実は、その奥が横尾忠則の作品が並ぶ部屋。黒っぽい作品が小さく見えている。
今回のヨコトリ、撮影が禁止されている部屋がいくつかある。この横尾忠則の部屋も、撮影ができない。この場所からもう少し近寄っても、ここに写っている紫色のシャツを着た係りの人、飛んできた。それはいい。
横尾忠則の部屋、『黒いY字路』が並んでいる。20点近く。
さまざまなものを描いてきた横尾が、”Y字路”を描くようになってから10年は経つ。しかし、”黒いY字路”を観るのは初めてだ。黒く、暗いY字路が描かれている。おもむくまま、といった荒っぽい筆致で。
横尾忠則、デッサンが確かで、その色づかいも多彩であった。キッチュな色づかいも含め。”Y字路”をテーマとした後も、色は使っていた。それが、黒になった。黒に行き着いた。
黒という色、横尾の色とは対極にあった色である。今、横尾忠則、その黒を多用している。プラド美術館にあるゴヤの「黒い絵」でさえ、多くの色が使われているのに。
横尾も70代半ばになる。横尾は、ゴヤを意識しているに違いない。ゴヤを意識して、なんの不思議もない。
それにしても横尾の今の絵、黒っぽくて暗い。しかし、とてもいい。
「腰巻お仙」はじめ状況劇場のポスター、高倉健を描いたもの、その他の横尾作品、素晴らしいものが多くある。絵かきに専念した後も。
しかし、将来、”黒のY字路”の一連の作品群、横尾忠則の代表作と言われることになるのではないか。そんな予感がする。暗く、荒っぽい筆づかいの作品であるが。でも、いい。面白い。

ポール・デルヴォーの横には、韓国の作家、ハン・スンピルの作品が何点かあった。
なんでもないようにも見えシュールでもある。『溶解』というタイトルだったか、この作品に惹かれた。不思議な感じに襲われた。ただの三重の塔といえば、そうなのだが。

田名網敬一のビデオ。この人、音声を聴きながら、じっと画面を見つめていた。

今回のヨコトリ、映像作品が多かった。これは、ミルチャ・カントルの『幸せを追い求めて』。

拡大すると、箒を持った何人かの女性が輪になっている。
短時間観ていただけなので、その心は知らないが、美しいではないか。

嵯峨篤の作品『Still White ー Corridor』。「静かな白 ー 通路」、とでもいう意だろうが、ただ白い壁。
手前の灰色の線から中へは入らないで、と係りの人は言う。みんな、足早に通り過ぎていく。その影が白い壁に映る。作家の意図は知らないが、高松次郎の作品を思い出す。