力作瞥見(1)。

私たちの仲間の作品、個展を開いたり団体展に出品したり、というものは、その都度紹介している。9月初めに載せた二科のY.K.や、6月末に2日にわたり載せたY.S.や、年に2度紹介のR.G.や、S.Y.や、年に何度も発表をしているM.I.たち。同期間、銀座で個展を開いているM.I.を除いた4人は、今回展にも出品している。
しかし、彼らの作品ばかりでなく、他の仲間の作品も力作ぞろい。私の作品を除いては。
そこで、今まで紹介した上の4人を除く人たちの作品を、何回かに分け、紹介してみたい。載せてもいいよって言った人の作品を。

T.Y.の作品。左は、「チェロソナタ」、F30。右は、「妙高の夏」、F10。カンバスに油彩。
T.Y.は、今回初出品。本格派だ。題材といい、アクリル絵の具を使うのが多い中、油絵の具にこだわっているところといい。
T.Y.とは、同学年。しかし、学生時代は、さほど親しくなかった。暫く前に死んだ双方の友人の関係で、知り合ったようなもの。その後も、どんな仕事をしているのかも知らなかった。学校を出た後、ずっと銀行員だったそうだ。私たちのサークルで、銀行へ入った男は、レアケース、他に知らない。
大手銀行を定年になった後は、関連会社へ行き、65歳で完全リタイアした、と言っていた。正統派、真面目な男だ。その正統派ぶりを改めて知ったのは、一昨日の飲み会の折り。
何とT.Y.定年後、7〜8年前から、日展系の先生の教室へ通い、改めて絵の勉強を始めた、という。今に至るまで、ずっと。本格派であるのも、むべなるかな、である。凄い。力作だ。

まず、T.Y.に謝らなくてはならない。その1点を大きく撮ったら、このような色調になってしまった。
曲がらないように、カメラの設定を変えて撮ったのがいけなかったようだ。実際の作品の色調は、ずっと深いもの。上の写真の色調に近い。パソコンに取りこんだ後、いろいろ手を加えたが、本来の作品の色調にはならない。だから、T.Y.、その点は、お許しを。
T.Y.、こういうことを言っていた。
「まずは基礎を勉強し、その後で、自分なりの表現を突きつめていきたい、と考えている」、と。これも凄いことだ。そのようなことなど、つゆほども考えない私、ビックリもしたが、感服もした。
故に、力作の初っ端は、T.Y.の作品、とした。

K.S.の作品。タイトルは、左から「心象 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」。イラストボードにコラージュ。
実は、K.S.、以前に個展の模様を載せたY.S.のカミさん。学生時代のサークル仲間が、そのまま結婚にまで至るのは、レアケース。たとえ結婚しても、それが何十年も続き、何人もの孫に囲まれているのは、よりレア。レア、レア、と打っているが、それが、とても稀なこと、私たちのサークルだけかな、ひょっとして。
そんなことはどうでもいいが、彼女の作品についてだ。書くべきことは。コラージュについてだ。
コラージュ、多くの絵描きが取り組んでいる。私もやったことがあるが、面白い。私はどうでもいいが、多くの名だたる絵描きのコラージュとK.S.のコラージュには、決定的に異なる点がある。
実は、K.S.、コラージュの専門家なんだ。
心理学専攻のK.S.、学校を出た後、母校の学生たちのカウンセラーとなった。私たちの行っていた学校、ボケーとした大まかなヤツが多いのだが、中には、繊細な神経のヤツもいるようだ。
K.S.、その後、日本医大へ移り、助教授で定年を迎えた。その後、筑波大のドクターコースの学生になった、と聞いた時には驚いた。
60幾つのバアさまが、まだ勉強するのか、と。実は、私も仕事をやめた後、学生になった。だが、私の学生は、単なる遊び、暇つぶし。しかし、K.S.の学生は、博士号を取るためのもの。人間のデキが違うんだ。
昨日の飲み会で、たまたま隣の席だったので、まだ筑波へは行っているのか、聞いた。「行き始めて4年になるが、今は、自主休学しているの」、と言っていた。忙しいらしい。
K.S.から聞いたことはないが、彼女が何冊かの書を上梓していることは知っている。臨床心理学の専門家として。『臨床心理学講義』とか、『コラージュ療法 基礎的研究と実際』とかといった、普通の人は手に取ることはないであろう、と思われる書ばかり。
先ほど、彼女の作品を載せるため、少し調べてみたら、また、驚いた。また学生に戻ったな、と思っていたK.S.、いつのまにか、○○大学教授や、○○研究所所長となっている。忙しいわけだ。よく会ってはいるのだが、そんなこと、チィーとも知らなかった。
私にとっては、K.S.は、後輩。嘗ての可愛い女の子のまま。バアさんになっても。だから、先輩風を吹かせ、デカイ顔をしていた。しかし、教授であろうと所長であろうと、これからも、先輩風を吹かすことには、変わりはない。学生時代の仲間だから。
「心象Ⅱ」には、”祈り”という言葉が入っている。3.11の後、全国民が祈っている。心理学の専門家としては、その思い、より強いことだろう。だから、”祈り”。おそらくは。

「心象 Ⅲ」の一部を取りだしてみる。
今回のコラージュ、「ナショナル・ジオグラフィック」を切りぬいて、コラージュに使った、と言っていた。周りには、深海に泳ぐ古代の生物たちがいる。真ん中のものは何だ、と聞いた。彼女の答えは、インドの仏さま、と。実は、私は、この佛の写真を知っている。
インドの西部にラダックと呼ばれる地域がある。チベット文化圏だ。その中心地・レーの近郷にあるアルチ寺というお寺の壁画なんだ。これは。「アラ、そうなんですか」、とK.S.は言っていた。
碌でもないジイさん、些細なことではあるが、大学教授や研究所所長に教えることがあることは、少しは愉快。
昨日だったか、一昨日だったか、K.S.、こういうことも言っていた。
C.I.S.のカウンセリング、ということを。C.I.S.、アルファベットはあるのだが、それは省く。日本語で言えば、”惨事ストレス”ということ。
3.11の大震災のあと、被害を受けた人たちをケアしていた警察官や、消防関係の人たちや、学校の先生や、役場の人たちなど、公的な機関の人たちが、自らもストレスを受けているのだという。
それらの人たちをケアする必要も、生じているそうだ。K.S.、このグループ展が終わったすぐ後には、そのケアのためのカウンセリングの講習を行なう予定が入っている、と話していた。コラージュを使ってやるのだと。それが、私にできるボランティア、とも。
エライな、やってくれ。世のため、人のため、お国のために役立ついいことを。
私たちのグループ、飲んだくれの連中ばかりではないこと、よく解かる。だから、まず最初は、この二人を載せた。
これから出てくるヤツは、どんなヤツか、今は、解からない。また、明日。