オールブラックスとジョン・カーワン。

結果は解かっている。ゲーム展開も、あらかたおそらくは、と推測できる。でも、昨日のブログを打った後、日テレの夜中の録画中継、見てしまった。

こう考えた。
私の残りの人生、ジャパンとオールブラックスのゲームを見ることなど、今後おそらく、あるまい、と。
何しろ、オールジャパンがオールブラックスと戦うチャンス、10年に1回あるかどうか、という状況だもの。なら、やはり見なければ、と。

ハカが始まった。
オールブラックスのゲーム前のハカ、ニュージーランドの先住民・マオリの闘いの舞い、ウォークライ。

ハカ、自らを鼓舞すると共に、相手を威嚇する。仕草もさることながら、文字通りクライ、叫ぶ。

ニュージーランドに限らずオセアニアの国々、それぞれのウォークライを持つ。トンガも、サモアも、フィジーも。いずれも勇壮な踊り。しかし、黒のジャージのオールブラックスのウォークライであるハカが、勇壮でありながら最も美しく眼に映る。おそらく、ジャージの色がそう思わせるのだろう。

ゲームが始まると、オールブラックス、格の違いを見せつける。
力強い。それ以上に、速い。スピードが違う。ラグビーは、ほとんど国内のゲームしか見ていないが、これほどパス廻しのいいゲームを見たのは、憶えがない。
このゲーム、日本代表のヘッドコーチ・ジョン・カーワンは、いわば捨てゲームにいった。主力を温存し、控え選手でメンバーを組んだ。折角のオールブラックス戦にベストメンバーで挑まなかった。今後のトンガ戦、カナダ戦に注力するために。このこと、昨日、触れた通りだ。何故だ、残念だ、と記した通り。
日本のヘッドコーチ・ジョン・カーワンのこの戦略に、オールブラックスのヘッドコーチがヘソを曲げた。そりゃそうだ。世界最強のオールブラックス相手に、ベストメンバーを組んでこないなんて、何て礼を失したことをするんだ、と思っても不思議ではない。
オールブラックスのヘッドコーチ、事前に発表していた先発メンバーから、キャプテンと有力なトライゲッターを外した。ちょっと怪我をしたので、という理由をつけて。そりゃそうだわな。バカにするな、ということだ。

スクラムでは、そう押しこまれるということではなかった。思いの外だった。
しかし、オールブラックス、球出しが速い。速い球出しで、スクラムサイドを突く、バックスへ廻す。面白いようにトライを重ねる。タックルの強さ、その精度も、まったく違う。

この場面、49分52秒だから、後半に入り10分ばかり経ったころ。スコアは、45−0となっている。日本のゴール前に攻めこまれ、さらにトライを取られた時のもの。この後もトライとゴールを重ねられ、最終的には、83−7という大差になった。
しかし、一夜明けた今日、ジョン・カーワン、こう語っている。
「ニュージーランド戦、悔しさはまったくない。自分たちは長い道のりを考えてやっている。ジャッジは、すべてが終わってからしてくれ」、と。ジョン・カーワン、今さら引けない。あくまでも、突っ張り続ける。
昨日も記したが、ジャパンのヘッドコーチ、ジョン・カーワン、元オールブラックスのスタープレイヤー。W杯でも数多くのトライを挙げている。ニュージーランドの英雄だ。
しかし、今回のカーワンジャパンの采配には、多くのニュージーランドの国民、「カーワン、お前は何を考えてるんだ」、と思ったに違いない。日本人である私でも、そう考えるのだから。

後半17分、日本が一矢報いた。
オールブラックスのパスを、ウィングの小野澤宏時がインターセプトした。そのまま40メートル独走、トライを挙げた。ゴールも決まり、7点を取った。
ゲームの後、小野澤、こう語っている。「ああいう展開だったから、相手も少し気が緩んでいた」、と。まあ、そうかもしれない。しかし、これが、カーワンジャパン唯一の得点。

このゲーム、こういう場面がよく現れた。オールブラックスが得点を挙げる度に出てくる。一瞬なのではあるが、オールブラックスがトライを取る度、ゴールを決める度に出てくる。
この葉っぱのようなもの、シルバー・ファーンだ。オールブラックスのジャージにも付いているギンシダ。
テレビ画面から一瞬で消え去るのだが、何しろオールブラックスがトライを挙げ、ゴールを決める毎に出てくるので、印象に残る。
カーワンジャパン、次ぎの相手は、トンガだ。トンガも強いぞ。
ラグビーというゲーム、面白いスポーツである。盛んであるのは、限られた国だけ。
よく知られているように、その発祥はイギリス。だから、ブリティッシュ・コモンウェルス・英連邦の国々が、滅多やたら強い。英国はもちろん、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカといったコモンウェルスの国々が、世界の頂点を争っている。英国に近いヨーロッパの国々も強い。
アメリカやロシアといった大国が、上位に居ないというのも面白い。このところ、何かというと出しゃばってくる新興大国の中国も、まだ下のランク、というのも面白い。
また、やはり新興大国になりつつあるインドは、コモンウェルスの一員ではあるが、ラグビーでは、中国同様、まだ下の方。インドでは、ラグビーではなく、やはりイギリス発祥のスポーツ・クリケットに特化してしまったようだ。
いずれにしろ、ラグビーというゲーム、現実の世界情勢とは、やや別の方向にあるスポーツである。だから、カーワンジャパンの次ぎの対戦相手・トンガが強いことになる。
トンガ、ブリティッシュ・コモンウェルスの一員、人口10万強、という小さな島国である。しかし、ラグビーの世界ランク12位。日本のひとつ上。
オールブラックス戦では、生れ在所の思いを断ち切ってまで突っ張ったジョン・カーワン、果たして、小国トンガに勝てるのか。
眼が離せない。