浮世離れ。

現実には、そんなことを言ってる場合じゃないのだが、どこか可笑しなことがある。その行動、どこか浮世離れしているな、ということが。
例えば、昨日、トリポリが完全に陥落し、その内に見つかるだろうカダフィは、外国へ行く時には、テントを持参していた。21世紀の世に、どこか可笑しいし、浮世離れしている。いかに、砂漠の民の習性をポーズしているにせよ。
何年か前、パリへ行った時には、エリゼ宮の近くにテントを張って寝泊まりしていた。2年前、国連総会へ行った時には、ニューヨーク近郊にテントを張った。初めは、セントラルパークにテントを張らせろ、と言ったそうだが、さすがそれは認められず、あのドナルド・トランプの所有地を借りあげたらしい。
5日前、20日午前にロシアへ入った金正日(キム・ジョンイル)の特別列車も、それに当たる。
喫緊の課題、山ほどあるのに、金正日、のんびりと列車で動いている。どこか可笑しく、浮世離れしている。
20日午前、ロシアのハサンへ入り、ウラジオストックへ移動し、23日午前、3200キロ離れた東シベリア、ブリヤート共和国のウランウデに到着した。シベリア鉄道をトコトコ走ったんだ。何ということ、浮世離れしているな。
メドベージェフとの露朝首脳会談は、24日。だから、前日にウランウデに着いた金正日、バイカル湖の遊覧船に乗ったり、飛行機工場を視察したりしていたそうだ。どこか可笑しい。面白い、というのとは、少し異なる。やはり、可笑しいんだな。
メドベージェフは、もちろん、飛行機で飛んでくる。24日の会談時間に合わせ。しかし、中国もそうだが、ロシアも北朝鮮の態度には、手を焼いているはずなのに、ずいぶん気を使っている。金正日をモスクワまで呼び寄せず、メドベージェフが東シベリアまで飛んで行くんだから。
ロシア大統領・メドベージェフ、金正日に会うために、ウラジオストックまで飛んで行くことは、さすが体面が悪い。面目が立つギリギリの場所が、ウランウデであったのであろう。それでも、金正日が列車で移動した距離の倍近い距離を、メドベージェフは飛んだのではないか。
核問題を巡る6か国協議への復帰する用意とか、ロシアの天然ガスを韓国へ送るための、北朝鮮経由のパイプラインの建設がどうこう、ということが話し合われたようである。しかし、そういうことは、さしたることではない。一向に進まないし、すぐに反故になることも多い。
それよりも、メドベージェフとの会談後、24日の夜、ウランウデを発った金正日の特別列車、今ごろ、シベリア鉄道をノンビリと走り、ウラジオストックへ向かっているな、と思っていた。
ところが、先ほど、チタからシベリア鉄道の支線に入り、満洲里(マンチューリ)に着いた、という。帰りは中国経由、としたらしい。
中国領に入り、ピョンヤン(平城)まで行くとなれば、中国としても何らかの対応を取らねばならないだろう。どの程度のランクの者が会い、対応するか、頭を捻っているだろう。
しかし、それにしても可笑しい。世界で最も問題がある国のトップが、ノンビリと走る列車に乗って動いているのだから。
どう考えても、浮世離れしている、としか言いようがない。