そろり。

先月下旬、杉浦良允の個展の前、やはり古い仲間の犬飼三千子のグループ展があった。
女流ばかり5人、神楽坂のこじんまりとした画廊で、皆さん、版画作品の展示。女流らしく、「初夏に・・・」という総合タイトルが打たれていた。

犬飼三千子の出品作。
犬飼、立体も作れば、平面も作る。タブローも描けば、版画も。それもさまざまな技法の。いわば、何でもこいの作家。テーマもさまざま。作風も多彩。おまけに四六時中展覧会を開いている。当然、多作。幾らでもアイデアが湧いてくるのであろう。今回の作品は、これ。

「Merge(2)」。
この作品、美しい。色も形も。少し治まりすぎている気もするが。

「Merge(3)」。
これも面白い。マージってのは、何か融合させてひとつにする、ということなのかな、と考える。そう言われると、たしかに調和がとれているように思われる。Mergeの(2)と(3)は。

このタイトルは、「宙から(1)」。上の2点とは、趣きが随分違う。
版画、さまざまな技法がある。ところが、今の版画、これは果たして何なのか、ということがよく解からない。単純に、木版であるとか、銅版であるとか、石版であるとか、シルクであるとか、ということがよく解からない。木を使ったリトグラフ(石版)なんてものまである。
犬飼の今回の作品の技法も、私にはよく解からなかった。後日、杉浦の個展オープニングの時に会った犬飼に聞いた。あれはどういうものなのか、と。エッチング・銅版だ、という。
エッチングの技法もさまざまであることは承知している。しかし、銅板に引っ掻き傷をつける、なんてこととははるかに隔たった技法が、多く出てきている。長谷川潔や浜口陽三の銅版画とは異質の。