蔡國強(続き)。

昨日の続き。

火薬の粉末吹き飛んで、無作為に焦げつく。

立てかけた作品を見て、蔡國強、こうつぶやく。
「だんだん死んでいくよ」って、どういうことか。大量の火薬を爆発させれば一瞬のうちに死ぬが、焦げつく程度の爆発なので、徐々に死んでいく、ということなのか。
いや、そんな物理的な問題じゃないな、きっと。より単純で、普遍的なことなんだ、おそらく。それとも、より深い意味合いがあるのかな。単純だが、深い、ということもあるのかもしれない。

そりゃそうだろう。ずっと世界のトップアーティストとして、色や形のことを考えてきたんだから。

続いて、蔡、こう言う。「正しい場所に、失敗したところ」、と。
整いたくないんだ。予定調和を恐れてるんだ。ものを創りだす人間、当然だ。「美は、諧調にあらず、ただ、乱調にあり」が、創造者の鉄則だもの。

アーティスト、創造者、自らに絶対の自信を持ち、主観的な人間が通常である。しかし、どうも蔡國強、自己を客観視しているらしい。

最後にたけし、蔡からお土産に帽子をもらう。もちろん、ただの帽子ではない。
帽子に、少量の火薬を仕掛ける。それを爆発させる。黒く焼け焦げる。「サインも?」、「もちろん」。そりゃそうだ。蔡國強のサインがないと、ただの焼け焦げた帽子にすぎないもの。たけし、嬉しそうだった。
たけし、家宝にしてるんじゃないかな、この帽子。
面白かった。
それにしても、「今、一番会いたいアーティストに会いに行く」の初っ端に、蔡國強を訪ねるたけし、やはり、ニクイ。もとより、”HANABI”には、思い入れは強いのだろうが。