蔡國強。

1週間ほど前のNHKで、蔡國強を取りあげた番組を見た。
北野たけしの「たけしアート☆ビート」、という番組の再放送。この番組、2か月ほど前から始まったもののようだが、知らなかった。その頃からあまりテレビを見なくなったので。再放送も、危うく見逃すところだった。
NHKのHPを見ると、北野たけしが、”今、一番会いたいアーティストに会いに行く”、という番組、と出ている。その第一回目が蔡國強だったようだ。
蔡國強、今、世界で最もアクティブで、アトラクティブなアーティストのひとり。世界中の現代美術館が、蔡國強の展覧会やパフォーマンスのオファーを出しているアーティストであろう。

北野たけし、蔡國強に会いにニューヨークへ行く。
蔡國強のアトリエというか、スタジオというか、ファクトリーというか、いずれにしろ仕事場は、ニューヨーク郊外の火薬工場の中にある。蔡國強、火薬を使って作品を創る。火薬を使ったアート、蔡國強の独断場。
羅針盤、紙、印刷、そして、火薬、中国が世界に誇る4大発明だ。長くニューヨークに住む蔡の作品、羅針盤以外の母国の3大発明すべてを融合している。火薬を爆発させて、その焦げ跡を紙に転写している、と言ってもいいのだから。

蔡國強、1957年、中国福建省泉州市生まれ。だから、子供時代は、文化大革命の嵐の時代だ。その後、上海で学び、1986年、日本へ来る。日本で約10年制作を続け、1995年、ニューヨークへ移る。
その後の活躍は凄い。ベネツィア・ビエンナーレはじめ世界の名だたる賞を次々に取る。そして、今や、世界の最先端を走る花形アーティストとなる。
長く欧米で活動する蔡國強であるが、中国政府とも上手く折り合いをつけている。中国政府が、世界の蔡を放っておかない、ということかもしれないが。
3年前の北京オリンピック、その開会式、閉会式の芸術監督は、蔡國強である。また、2年前の中国建国60周年の、北京での記念式典の芸術監督も、蔡國強。
こういう大がかりなパフォーマンスアートこそ、蔡國強の真骨頂。花火や光、煙など、空間に壮大な美の世界を創りあげる。瞬時、数秒、数分で消え去るアート、美の世界を。もちろん、蔡國強、中国の国家行事ばかりでなく、世界のあちこちでパフォーマンスを行なっている。

どこかジャコメッティを思わせるこの作品、タイトルもいつ頃のものかも解からないが、やはり、火薬は使われているようだ。

北野たけしが訪ねた時、蔡が創っていた作品のデッサン。読み辛いが、下のほうに、「垂死向日葵」と書いてある。

蔡、20種類くらいの火薬を使うそうだ。火薬の種類によって、爆発の仕方や効果、また、焦げ方やその色などが違うのだろう。

紙の上に火薬を置いていく。さまざまな火薬を。

その上に、何か板のようなものを乗せていく。こういう作業は、みなアシスタントというかスタッフがしている。

その上に、石のようなものを乗せる。

蔡、たけしにこんなことを言う。子供の遊びみたいに。
蔡國強の作品は見たことがある。また、彼の映像も何度か見たことがある。世界的なアーティスト・蔡、とても人懐っこい人間、という印象がある。中国風の日本語を喋ることも、あるのかもしれない。
用意が済むと、スタッフはみな、作品の周りから離れる。蔡が作品に近づき、導火線に火を点ける。

次々と爆発が起こり、煙が立ち込める。

爆発が収まると、両手に布のようなものを巻いたスタッフが駈け寄り、火を叩き消す。紙が、燃えてしまわないように。

完成した作品、「垂れて死んでいく向日葵」。
蔡國強の平面作品、こうして創られる。世界中の名だたる美術館が渇望し、金に糸目をつけぬコンテンポラリーアートのコレクターが泣いて喜ぶ作品が。値は、知らない。
蔡のこと、明日も続ける。