桜狩りの道すがら(8) 雑草。

桜狩りの道すがら余聞、今日で終わりとする。
で、少し考えたが、雑草にする。
1カ月余、いろいろなところで、さまざまな草を見た。道端、公園の下草、垣根の下、・・・・・。中で、最も眼に着いたのは、道路とコンクリート塀との境目に生えている雑草。わずかな隙間に根づき、立派に生きて、花を咲かせている。それぞれ名前があるのだろうが、解からない。
それはそれとして、4月半ば、半月以上前、近くの川を見に行った。堤防一帯、黄色い色に染まっていた。

何という名か、もちろん、私は知らない。しかし、ずっと向こうまで、一種類の黄色い花で覆われ、時折り強く吹く川風に、右に左に揺れている。
     うち靡き若草頃となりにけり     高橋睦郎
まさに、その通りの光景。
他の草もあるであろうに、この草以外は見当たらない。その生命力、よほど強いに違いない。
     春草に伏し枯草をつけて立つ     西東三鬼
     十歩踏めば十歩の草の芳しく     鈴木真砂女
たしかに、共にそのような風情がする。
しかし、犬の散歩をする人も多い。中には、犬の落し物の始末をキチンとしない不心得者もいるので、油断はできない。

近寄ってみる。こうして見ると、黄色い花、とても美しい。
     前髪もまだ若草の匂ひかな      芭蕉
若衆好み、衆道の大家・芭蕉らしい一句だな。
花ばかりでなく、草の姿も嫋やかで、これも美しい。雑草の美、といえる。雑草の”雑”とは何なのか、とも考える。
     若草に背中をこする野馬かな     一茶
     若草に口ばしぬぐふ烏かな      凡兆
さすがに馬はいないが、カラスはいる。このような光景、今でもあるのだろう。目にはしていないが。
昨日、散歩の途中に、また堤防に行った。
黄色い花、すっかりなくなっていた。半月少し前黄色一色であった堤防、ところどころ褐色が混じる緑色となっていた。