桜狩りの道すがら(4) 金縷梅。

時折り通る道沿いに、植木屋がある。植木を売っているのではなく、作庭や庭の手入れをしているのだろう。
建物の横に、庭というか畠というか小さな地面がある。石燈籠が立っているが、さしたる木があるとも思えない。
半月ほど前、端の方に赤い花をつけた木があるのに気がついた。2〜3メートルのものが二株。
近寄ると、細いヒモのような花がビッシリとついている。何かな、と思っていた。
何日か前、その前を通ると、小さなトラックが停まった。植木屋の車らしい。横幅のあるゴツイ若者が降りてきた。丁度いい、聞いてみよう。「すみません。あの端の方にある赤い花の咲いている木、何という木なんでしょう」、と。
ゴツイ身体に似あわぬ優しい声で教えてくれた。「あ、あれは、まんさくです。親方がどこかから持ってきて植えたんです」、と。

調べると、「まんさく」、「金縷梅」と書く。いかにも中国が匂う名。日本では、「満作」とも。豊年満作に因んだ名だそうだ。多くの花が、垂れさがって咲く様からそのように。
なお、これは何日か前、名前を教えてもらった時に撮ったもの。盛りを過ぎ、花色もややくすんできていた。

これは、半月ほど前の様子。
それにしても金縷梅、いずれの書にも、その花期は2〜3月となっている。春に先駆けて咲く、と。”まず咲く”が訛って「まんさく」に、とも。しかし、私が気づいたのは、今月半ば前、案外その花の時期、長いのかもしれない。
また、黄色の花が、通常であるとも。だが、私が見たのは、赤い花。紅花満作と言われるものらしい。
それよりも、近くで見ると、赤い花そのものよりも、その間に見えるつややかな若葉の方が、より美しく感じるな。

金縷梅、満作の花は4弁、と書にはある。しかし、より近寄ると、4弁どころか、細くねじれた多くの花弁があるように見える。チアガールが持つボンボンのようだ。ひとつの花に見えるが、幾つもの花が集まって、そう見えるのかもしれない。
     まんさくは煙のごとし近かよりても     細見綾子
今日また、植木屋の前を通った。「まんさく」の花、だいぶ散っていた。
しかし、盛りのころとは異なるが、まだ残っている花々、少し離れると、やはり、煙のように見えた。