専門家。

2〜3日前から、あまりテレビを見なくなった。必要最小限のニュースは見ているが。
ホウレンソウから基準値を上回る放射性物質が検出された、といっては、スーパーに買い物に行っている人が、”正しい情報がないので、心配だ”、と言っている映像が流れるからだ。ホウレンソウばかりか、他の野菜まで売れない、という。つまり、買わない。それが、虚しく思えるからだ。
小松菜やキャベツ、パセリ、ブロッコリーなどからも、放射性物質が検出された。専門家は、一時的に食用に供されても、健康に問題はない、と言っている。今日は、東京や茨城の浄水場から、乳幼児の飲用基準値を超える放射性物質が検出された。これも、赤ちゃん以外は、問題ない、と専門家は言っている。その内、魚からも検出されるに違いない。それも、同じだろう。
大震災で、福島第一原発の問題が発生して以来、原子力の専門家が直ちに健康に問題になるものではない、と言っている。原発から半径30キロの範囲を除き。私は、主にNHKを見ていたが、東大大学院の教授が二人、それに、阪大大学院の教授が入れ替わりで出ていた。専門家として。
食物の問題が出てきた後には、その人たちに加え、放射線や放射線医学の専門家、広島大学や東大、杏林大学、学習院の教授が説明していた。いずれも、新しいデータが出る度に、直ちに健康に影響があるものではない、と言っている。おそらく、日本を代表するであろうこれらの専門家が、過剰に心配することはない、と言っているのに、それを信用しない人が多くいる。
東北や北関東で取れたものは、何でも食べない、買わない、という人が。風評被害を作りだしている。それが哀しい。専門家の言うこと、当てにならない、と思っている人が多くいることが、哀しく、それを流すテレビを見ることが、虚しい。
日本の食品衛生法の基準値は、非常に厳しいものだ、という。第一、ホウレンソウにしろ何にしろ、毎日同じものばかり食べているなんてことは、ないだろう。1年、365日、ホウレンソウばかりを食べているのは、ポパイ以外、おそらく、いない。過剰反応をすることはない、と思っている。
いいことなのか悪いことなのかは、知らないが、私の頭は、大雑把にできている。だから、専門家のいうこと、そうなのか、と思っている。信用している。今日も、キャベツやブロッコリーを食った。ニンジンや大根も食ったが、これは根菜類なので別にしても。産地はどこかは知らないが、千葉で売っているもの、北関東か東北産であろう。心配しない。
何も、子供や若い人たちに進んで食えとは、言っていない。お国のためには、何の役にも立っていない、65歳以上のリタイアした私たちは食べようではないか、と思っているだけである。年はとっていても、国の役に立っている人は、別でいい。
頭の構造が大雑把で、ものごとを複雑に考えない私は、専門家の言うことを信用する。だって、知識のない私と違い、その分野のこと、永年に渉り研究してきた人たちだもの。
しかし、政府の発表やマスコミ、特にNHKの報じていること、まったく信用できない、という人もいる。実は、3日前にそのブログを引いた、藤原新也もそうである。藤原新也、テレビに出てくる専門家連中、信用できない、と記している。
若いころから、既成社会、既成秩序、既成論理、既成思考、既成のことごとくに対峙してきた藤原新也が、そう言うこと自体は、理解できる。しかし、信用に足りうるものは、これのみだろう、というのには、同意しかねる。頭を捻る。が、公平を期すため、それも引いておこう。
藤原、マスメディアに出てくる専門家は、御用学者ばかり、と言っている。そして、武田邦彦をあげ、御用学者でない彼のブログは、正確で信用に足りうるもののようだ、と記している。
武田邦彦、中部大学の教授であり、やはり、原子力の専門家である。他の分野の専門家でもあるらしいが。それはともかく、福島第一原発の事故が発生して以来、日夜、発信を続けている。計算した数値をまじえ、その危険性、状況を。文章の才もあり、言っていること解かりやすい。
武田邦彦、政府やマスメディア、特にNHKの報じていること、詭弁であり、ごまかしばかり言っている、と記している。東大初めマスコミに出てくる専門家、ごまかしばかり言っている、と記している。武田のファンも多くいるらしい。武田邦彦信者が。
武田邦彦、専門家であろう。NHKに出てくる専門家とは、異なる専門家ではあろう。NHKに出てくる何人もの大学教授も専門家、武田邦彦も専門家、しかし、私は、国民に不安を与えかねない武田の言っていることよりも、毎日食わなければ心配ない、という専門家の言葉を信用する。
専門知識のない私たち、その道の専門家の言葉で、自らの行動を判断しているのだから。
『徒然草』の第51段に、こういう一節がある。
<よろづに、その道を知れる者は、やんごとなきものなり>、という一節が。何ごとにつけ、専門家の意見は大切なものである、ということ。たしかに、そうだ。問題は、どの専門家の意見に自らを置けばいいか、ということだろう。
NHKに出ている学者たちが正しいのか、それを批判している武田邦彦が正しいのか、門外漢には解からない。だが、ものごとを大雑把に考える私は、NHKに出ている専門家の意見を信用している。だから、キャベツやブロッコリーも食っている。
他人さまには、強制はしないが。