無力感。

80歳のおばあちゃんと16歳の孫が、地震発生後9日間以上も生きのび、助けられれば、よかった、と思う。
自衛隊や東京消防庁のハイパーレスキュー隊が、命を賭して原発への放水を続けている画面を見れば、ありがたい、と思う。
彼らのように姿は見えないが、原発施設内で電源ケーブルを延ばしたり、繋いだり、点検したりしている東電や関連企業の作業員にも、頭が下がる。おそらく、決死の自衛隊員や東京消防庁のレスキュー隊員以上に、長時間放射線を浴びているだろう。
命だけは助かったが、収容された避難所には、食料はない、燃料はない、薬もない、という人たちには、かける言葉もない。
自身も、津波で連れあいを失ったが、動きのとれないお年寄りの世話をする老人福祉施設の女性には、ただ、エライ人がいるな、と思うのみ。
福島第一原発の半径30キロ以内の屋内退避地域の病院で、半分くらいの医者や看護士は出て行ったが、残った医者と看護士で患者を診ている、という病院長も同様。ただ、エライ人だ、としか言えない。
その他、多くのエライ人、凄い人がいる。
何よりも、おそらく、2万数千人にのぼる亡くなった人や、未だ不明の人がいる。
幾つかの県のホウレンソウや牛乳から、食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が検出されている、という。枝野は、直ちに健康に影響はない、と言っている。しかし、出荷停止になった。
毎年、肺のCTや腸のバリウム検査を受けている私は、今までにも多くの放射線を浴びているので、そんなこと大したことじゃない、と思っている。20年前に胃を切り取ってから牛乳は飲めなくなったが、ホウレンソウはこれからも食う。しかし、不安だ、何を信用していいのか、と言っている人が多くいる。こういう言葉を聞くと、虚しくなる。
今日、被災地に入る、としていた菅直人、取り止めたようだ。今日の朝日には、小泉純一郎の大番頭であった飯島勲が、菅直人に対し、現場視察慎め、と言っている記事がある。官邸は、大局見据えビジョンを、と言っている。私は、菅直人、行け、と思っていた。
福島第一原発の敷地内に入れ、とは言わないが、防御服の必要のないところまでは行け、食料や燃料や薬が届かない避難所へ行け、と思っていた。飯島勲の言うことが、正しいのかもしれない。しかし、私は、菅直人の今日の被災地入りの取り止め、やはり、虚しく思う。
実は、地震発生以来書いてきた、私の碌でもないこのブログにも、虚しさを感じている。
ましてや、昨日キーを打った、”チャーチルの戦時小内閣に倣って、挙国一致大連立内閣を作れ、度量を示せ”、なんてこと、私ごときが言うことではない。電気を暗くしたり、僅かな寄付しかしていなく、あとは何にもしていない私などは、そんなことを言う資格がない、と今日思いいたった。恥ずかしい。
だから、今日は、あまりテレビを見なかった。どのようなことであれ、ただ、虚しさを感じるだけ。
当事者でないものに何が解かる、と思うだけ。無力感に囚われている。売れっ子のタレントが、募金活動をしていますとか、被災者を元気づけるメッセージを発信していますとか、ということもそうである。非難はしないが、虚しく感じる。
『メメント・モリ』の藤原新也が、昨日から三陸沿岸の町に入っている。今日は、陸前高田から発信している。「私のブログは転載引用自由」、と書いているので、藤原新也の今日の発信を転載しておく。



2011/03/21(Mon)
22:10
陸前高田。

帰り道国道沿いレストラン。

はじめてのまともな食事にありつく。

トイレ。

TOTO「音姫」。

手をかざしてください。

25秒間水音が鳴ります。

3.11以前。

私たちはこういった虚構の世界の住人だった。

いや今もどこかで音姫の擬似水音が流れているのかな。



     
 

2011/03/21(Mon)
16:50
陸前高田。

全市消滅。

昭和消滅

神様消滅。

1001回目のため息。


     
 

2011/03/21(Mon)
01:55
階上(はしかみ)避難所、家族、冗談ばかり飛びかうのがきつい。


     
 

2011/03/21(Mon)
12:58
子手引く、すれ違いし主婦の眼の色、青ざめ哀しみ塞き止めている。


     
 

2011/03/21(Mon)
10:06
瓦礫の中、所々からムッと腐臭

屍、死してここにいると必死で信号送っているよう。
が、どうしょうもない。



     
 

2011/03/21(Mon)
09:44
居残った桜並木の蕾がはちきれそうに咲きたがっている。

やがて瓦礫荒野に満開。

その風景は吉か凶か。