淡雪降る。

朝起きると、雪が降っている。2月11日、靖国の雪以来である。
雪国でご苦労をされている方には、申しわけないのであるが、雪が降ると、なぜか嬉しくなる。大した降りではないにしろ。

     春雪やふるにもあらずふらぬにも     千代女

     暁くらく春雪樹々を蔽ひけり     蛇笏

昼、近所の学校へ。傘をさしても、オーバーのあちこち春の淡い雪がまとわりつく。手で振うと、水滴となって消えてしまうのだが。
     袖に来て遊び消ゆるや春の雪     虚子

授業が終わり外へ出ると、雪はやんでいた。誰もいない小さなグラウンドは、一面白くなっている。薄っすらとではあるが、雪が積もっている。
     あはゆきのつもるつもりや砂の上     万太郎

     いつしかや手のあたたかく春の雪     汀女
開いている食堂で遅い昼飯を食い、ついでに少し酒を飲む。ゆっくりと休み外へ出ると、細かな雨が降っている。
     下町は雨になりけり春の雪     子規
という風情であるが、”下町”というのは、やはり、都会地であってのものであろう、と考える。山の手とか下町とか、と言うのは。千葉の田舎町では、山の手も下町もない。みな一律に、ただ田舎町。
しかし、春の淡雪が雨に変わるという風情は、子規が詠む句と同じ情趣。