文化と文明。

白鵬がいかに強かろうと、上位力士の過半をモンゴル勢やヨーロッパ勢が占めていようと、相撲は、日本文化のひとつである。
”ちょっともの解かりが良すぎるんじゃないか、お前さんは”、と思わないではないが、そのことを一番解かっているのは、白鵬であろう。ことあるごとに、そのようなことを言っている。
その日本文化の一翼を担う、日本相撲協会の理事長・放駒が、また、頭を下げる事態が発生した。今日、突然に。

放駒は、多くの不祥事に揺れた大相撲の立て直しのため、昨年理事長に就いた。日本相撲協会の最後の切り札だ。

こういうメールが行き交っていたらしい。モロだな、これは。

放駒、こう言い、さらに、厳重に調査し、事実が判明したら、厳しく処分する、と言っている。
今、疑いの出ている13人の力士、幕内力士もいるが、その多くは、十両と幕下上位の力士たち。ここに根があるな。
プロスポーツの世界、実力の世界。勝ってナンボの世界だ。アジアカップで勝った翌日か翌々日には、長友佑都、世界一のクラブチーム・インテルへ引きぬかれた。大きくステップアップした。そういう世界だ。相撲の世界も同じ。番付けが、ものをいう。それはいい。当然だ。しかし、大相撲の世界、あまりに不条理、ということもある。
十両の月給は、100万強だ。だが、そのすぐ下の幕下の給料は、0だ。つまり、給料なし。いかに、大銀杏を結える関取・十両になって一人前の世界だとはいえ、これは少し問題がある。
当然だとは言わないが、十両の下位力士と幕下の上位力士との間に、星の貸し借りが生じてもおかしくない。貸し借りばかりでなく、売り買いが生じても。生活がかかっている。ことは、13人の力士ばかりではないだろう、おそらく。
給与制度の検討、必要じゃないかな。今回の問題は問題として。日本相撲協会は。

しかし、また別の面も考える。
今の大相撲、こういうものが、その原型であろう。並はずれた身体を持つ男、日常とは異なる珍しいものを見る、それを楽しむ、芸能興行の面も持っている、ということを。スポーツには違いないが、歌舞伎などと同じく、特有の日本文化である。
勝ち負けということもあるが、そこにまた、情というか何らかの、割りきってしまうことができない要素も含まれている形態の、芸能興行であり、伝統文化である、ということも。
八百長などというと、根も葉もないが、日本文化、一筋縄で括れるものでもない、ということも考える。あまり奨励される考えではなかろうが。
エジプトの情勢、いよいよ、確実に、終盤に入った。

昨日深夜、ムバラク、こう表明した。
ただし、今すぐには辞任はしない、9月の任期いっぱいまでは、その職に留まる、と。

しかし、100万人のデモを敢行したエジプト市民、あくまでも即時辞任を求めている。

このように。
おそらく、2日後、次の金曜日が、勝負の日となるだろう。
なお、5日前の金曜日、私は、ムスリム同胞団がデモに参加している、ことは簡単ではなくなってきた、と記した。ムスリム同胞団、非合法組織だ、と書いた。しかし、これは誤りだった。
アラブ各国のムスリム同胞団、非合法化されている。だが、エジプトでは、ムスリム同胞団として、議会選挙には立候補はできないが、組織自体は非合法にはなっていない模様。選挙には、無所属での立候補は認められているらしい。しかし、前回の選挙では、ムスリム同胞団、選挙をボイコットしたらしい。

しかし、今最も困っているのは、アメリカだ。
ムスリム同胞団は、イスラム原理主義組織だが、まだ穏健派だ。より急進的なイスラム原理主義組織が、エジプトを支配するようなことになれば大変、イランの二の舞になる。アメリカばかりでなく、先進各国みなそう思っている。

だから、オバマ、ムバラクへ電話をかけまくっているようだ。早く辞めてくれ、と。その方がいい、と。
しかし、エジプトの動向に不安感を持ったり、懸念を抱いているのは、アメリカやオバマだけではない。

昨日、中国ではこうなったそうだ。
国内に多くの不満分子を抱える中国、ネットで云々には過敏に反応する。

エジプトは、産油国ではない。しかし、国内に多くのパイプラインを持つ。何より多くの石油を精製しているようだ。日産110万バレルの石油を精製しているそうだ。

だから、アメリカのエネルギー問題の専門家は、こう言っている。こうなる恐れ、多分にある、と。

エジプトは、面白い国である。観光大国でもある。観光収入、GDPの11%も占めている、という。
エジプトばかりでなく、世界中の旅行業者が事態の推移を懸念している。JTBや近ツリやHISも含め。

懸念するばかりか、怒っている人もいる。東博のエジプト部門の専門家、この人だ。
世界の四大文明いずれ劣らぬ長い歴史を持つ。だが、ナイル河畔のエジプト文明は、この人の言うように、5000年は確実に遡ることができる。

法律も、文学も、美術も、音楽も、あらゆる文化、その源はエジプト文明にある、それを、と東博の上席研究員・後藤さんは、滔々と述べる。怒りを交えながら。何故か。

先週の金曜日のデモの後、カイロの考古学博物館が襲われた。ミイラ2体が被害にあった。この写真のものはミイラではなく、副葬品であろう。しかし、考古学博物館を襲うなんて、何事だ、自殺行為に等しい、そう言って怒っているのだ、東博の後藤さんは。
今は改造中で閉鎖されているが、東博の東洋館には、たった1体だがエジプトのミイラがある。エジプト部門の専門家である後藤さん、おそらく、毎日そのミイラを眺めていたのに違いない。思い入れは、強い。だから、カンカンに怒っている。私も、悲しく思っている。
エジプトのミイラ、私の知る限り、最も凄いものは、大英博物館の展示である。常設展示に限って言えば、カイロの考古学博物館の展示よりも、大英博物館の展示の方が、数も多いし、迫力もある。ツタンカーメンの黄金のマスクのような、スーパースターでは一歩譲るが。
1体しかない東博の後藤さんでもこうだから、大英博物館のエジプト部門の専門家たちは、より怒っているだろう。しかし、それと共に、恐れてもいるだろう。もし、ムバラク後のエジプトが、急進的なイスラム原理主義者が主導する国になったら、ということを考えて。
その場合、大英博物館のエジプト美術を返せ、ということになるかもしれない。ミイラばかりか、ロゼッタストーンも含め。今ごろは、大英博物館の専門家、エジプト情勢何とか穏便な終息に、と思っていることだろう。