北泰紀行(20) ナイトバザール。

チェンマイのナイトバザール、夜毎開かれている。旧市街とピン川の間あたり、チャンクラン通りで。

通りには、赤い乗り合い自動車・ソンテオが走っている。

トクトクも。その向うには商店が軒を連ねる。

商店と道路の間に小さな露天が出ている。このような。しかし、人は少ない。

このような店が並ぶところも多いが、やはり、人出は少ない。
この夜はそういう人出の少ない夜、だったのかもしれないが。

表通りに面して大きなビルがある。中に入ると・・・・・
オッ、似顔絵描きがいる。10数人が店を広げている。Tが、「モンマルトルだな、ここは」、と言う。たしかに、多くの似顔絵描きが店を広げているのは、モンマルトルと同じ。しかし、テルトル広場の似顔絵描きの描くもの、その描き方はさまざま。第一、路上にイスを置いただけで、小規模だ。
だが、チェンマイのナイトバザールの似顔絵描きは、その作風はみな同じ。精密、緻密に描いている。似顔絵描きではなく、精密画家とか、複製画家、模写画家、と呼んだ方がより正確だ。路上でなく、店も構えているし。

チェンマイのナイトバザールの絵描き、このような絵を描いている。写真と見紛うような。
写真を精密に模写したものだ。10数人の絵描き、すべてそうであった。
元日のブログに載せた「アフガンの少女」の絵、このバザールで求めたものだ。「ナショナル・ジオグラフィック」の表紙となり、アフガン問題ばかりでなく、その後の反戦のシンボルともなった「アフガンの少女」、ほとんどの絵描きが描いていた。スティーヴ・マカリーの撮った写真を、正確に写し描いている。磨きに磨いたテクニックを駆使して。
しかし、そうはいっても人の手で描くもの、それぞれの絵描きによって、微妙にその趣き異なっている。私の求めたもの、厳しい眼差しは変わらないものの、頬のあたり、ややふくよかな感じもする。この絵描き、昼は美術学校で教えている、と言っていた。

この人は、左手に写真を持ち、細かい作業を丁寧に続けていた。
使っているのは、エンピツ。根気のいる作業だ。

この人は、カラー写真を貼った薄い板を左手に持っている。しかも、ルーペを使っている。
今、描いているのは、どうも家族の肖像のようだ。注文を受けての制作かもしれない。

ナイトバザール、表通りから少し入った広場にも、多くの店が出ていた。しかし、人の姿は、ほとんどなかった。

帰りの表通り、客待ちのトクトクの姿ばかりが目立つ。
この日は、そういう夜だったのだろう。