何考えてんだか。

アメリカの中間選挙、大勢が判明した。民主党、歴史的な敗北を喫した。
予想されたことではあったが、それを上回る大敗だ。
医療保険改革、グリーンニューディール政策をはじめとする大幅な景気刺激策、オバマの改革、オバマの施策、ことごとくNOを突きつけられた。何より、景気が悪い。全米平均の失業率は、10%近い。失業中、ないしほとんど仕事がないという人は、2600万人に達している。
すべての国民に医療保険をなんてこと、国として当たり前のことじゃないか、世界に冠たるアメリカで、と考えるが、それがそうでもない。どうして俺たちの税金で、貧乏人を助けなきゃいけないんだ、まっぴらご免だ、という人が非常に多い、という。大幅な景気刺激策、財政出動も、俺たちの税金が増えるだけだ、となる。
多くのアメリカ国民、自己中心になっている。内向きになっている。それが本来のアメリカだ、アメリカンドリームの国とは、そういうものだ、と思っているアメリカ人が増えている。
自分のことは自分でやる。そして、駈け上る。それが、自由の国・アメリカだ、と。たしかに、そうだ。しかし、そうとばかりじゃない現実もある。多少は、人の手助けをしたっていいのじゃないか、そう思う。
しかし、現実には、そのようなアメリカンドリームを、狭義に解釈している連中が、ティーパーティーなんて行動を起こしている。それがどんどん広がっていっちゃった。アメリカ独立に繋がる、ボストン・ティーパーティーには、理想があった。しかし、今のティーパーティーには、そんなもの感じられない。自分のことだけを考えている。気味が悪い。
そのティーパーティーの連中が推薦する共和党の候補を、サラ・ペイリンが推していた。50人も。正確には判らぬが、相当数の候補者が、当選したのじゃないか、と思われる。共和党内での、サラ・ペイリンの影響力、弥増すことになる。再来年の大統領選挙に立つ可能性が高まる。アメリカ国民ではないが、やはり、困る。
「アタシんチの庭から、シベリアが見えるのよ」、と言ったり、副大統領候補になる前年まで、パスポートも取ったことがない、なんて人が、アメリカの大統領になるかもしれないのは、アメリカ人じゃなくても、困る。アメリカの大統領は、世界のリーダーと同義語なんだから。
しかし、今回のオバマ民主党の敗北、何と言っても、経済情勢、雇用の問題が大きかった。
2〜3日前のニュースで、こんな映像が流れた。伝統的に民主党が強いカリフォルニアでの話。民主党の現職議員が、共和党の候補に追い上げられ、接戦となっていた。民主党現職、テレビCMに、こういうネガティヴ・キャンペーンを流す。
”共和党候補のカーリー・フィオリーナは、2万5千だか6千人だかの雇用を、中国に売った女だ”、というネガティヴ・キャンペーンを。
カーリー・フィオリーナは、ヒューレット・パッカードの元CEOだ。CEO時代、HPのアメリカの工場を閉鎖し、中国へ製造拠点を移したらしい。2万5〜6千人が、失業した。それを、突いている。なにしろ、カリフォルニアの失業率は、全米平均を上回る12%。それが効いたのかどうか、ボクサーという名の民主党候補、辛勝した。
今の世界、雇用問題は、大きな問題だ。日本の失業率も、5%程度で大問題だが、アメリカのそれは、日本の2倍。大々問題だ。
それにしても、オバマ民主党、これほどの大敗を喫するとは。これほど多くのアメリカ国民が、オバマにNOと突きつけるのは。正直言って、驚いた。
さまざまな事情、解かっていながら、アメリカ国民、「何考えてんだか」、と思う。
アメリカにとって、悲しむ。親米でも、嫌米でも、愛米でもないが、好米論者の私としては。
50年ぶりの、六大学野球秋季リーグの早慶戦での優勝決定戦、早稲田が制した。斎藤佑樹が、先発で投げ、大石達也が、引き継いだ。夜の各局、すべてトップニュース。こんなに過熱している、とは思わなかったが、私も見た。NHKの中継で。
50年前、昭和35年の早慶戦は、伝説となっている。早慶同率首位で、決定戦に持ちこまれた。延長引き分け。再決定戦も、延長引き分け。再々決定戦で、早稲田が勝った。早慶6連戦、安藤元博4連投。伝説となった。私は、その翌年、昭和36年(1961年)に、その記録映像を観ている。それは、凄かった。なにしろ、安藤4連投。
私は、斎藤佑樹には、いくばくかの懸念を持っている。甲子園の頃から。
斎藤佑樹には、かすかな縁もあるので、応援しなきゃいけないのだが、田中マー君(甲子園の頃は、まだマー君とは呼ばれず、将大と言われていたが)の方が好きだった。ハンカチ王子の斎藤佑樹君は、ベビーフェイスで、田中将大君は、ヒールみたいな位置づけがあったからかもしれない。
1年ぐらい前だったか、友だちのIと話していたら、「この間、神宮へ斎藤佑樹を見に行ったが、やはり、斎藤は凄い、アイツはいい」、と言う。それでも私は、「オレは、やっぱりマー君だな」、と応じた。斎藤佑樹に対し、私の懸念、拭い去れないんだ。
コントロールは、たしかにいい。しかし、球威がない。今日も、不運な面もあったが、8回に打たれた。
それよりも、7回のことだ。
NHKの中継、7回の早稲田の攻撃に入る前、中継を中断、ニュースを流した。6大学野球では、7回の攻撃に入る前には、校歌の演奏があり、皆それを歌う。神宮球場のスタンドばかりじゃなく、テレビの前でも。それを、中断した。
NHK、「何考えてんだか」、と思った。
8回に、斎藤佑樹が連打を浴び、5点も取られたのも、その中断に原因があるんじゃないか、とさえ思った。冷静に、よく考えてみれば、日本国民にとっては、早稲田の校歌よりも、ニュースの方が大事なこと、よく解かるのであるが。
暫く前、プロ野球のドラフト会議があった。それは見ていないが、夜のニュースでその模様を見た。カミさんが、「もう、4年になるのね」、と言った。「年とったな」、と私は言った。いや、斎藤佑樹のことじゃない。私自身のことだ。
斎藤佑樹は、日ハムが交渉権を取った。北海道の人は、喜んでいる。だが、私の懸念は続いている。これから4年後、斎藤佑樹、まだプロの世界にいるかどうか、という思いがある。あの早慶6連戦、安藤4連投、の安藤元博も、プロに行き、数年を経ずして消えた。
斎藤佑樹、これから4年後に、はたして、プロの世界にいるのかどうか、と考えた。それより、オレ自身が、4年後、この世にいるのかどうかを、考えた。
アメリカ国民、「何考えてんだか」、と思い、NHK、「何考えてんだか」、と思った一日だった。しかし、これでは、私自身も、「何考えてんだか」、だな。