月と飛行機。

郵便局に行った後、少し歩こうかと思い、のっそりと歩きだす。別に宛てはない。
天気はいいし、暑くもなく、寒くもない。右に行こうか、左に曲がろうか、と思っているうちに、右に曲がった。信号の加減で。
この近辺、犬の散歩をしている人が多い。ジョギングをしている人もいる。稀に、競歩もどきのようなことをしている人もいる。今日も、ひとりいた。キャップを被り、半袖シャツで、両腕を直角に曲げ、それを振り、背中を伸ばして、トットトットと歩いている。私は、ゆっくりと、のんびりと歩く。それでも、4〜50分歩いた。
気がつくと、月が出ていた。白い月が。

薄い色の雲の上は、青い空が広がっている。その中に、白い月が浮かんでいる。
月の出は、案外早い。今ごろだと、2時半ごろが月の出。この時は、4時半ごろだったので、もう相当高い空に上がっている。青空の中に。
空に浮かぶもの、太陽は、直接見ることができない。星は見ることができるが、いかに明るい星でも、小さなもの。望遠鏡でもなければ、その形は分からない。月だけが、唯一肉眼で見て、その形が分かる天体だ。
後の月、十三夜は、明後日。今日は、2日前だから十一夜。まだ明るい夕刻前だから、この月は、十夜半程度のものだろう。青空に浮かぶ白い月、それでも、ふっくらとしていた。

と、飛行機が飛んできた。
この辺りで飛行機を見るのは、珍しい。月に一度ぐらいしかない。少なくとも、私が歩く時間では。
当たり前のことだが、飛行機は、お月さまよりズッと下を飛んでいる。水をタップリ含ませた筆に、絵の具を少しだけつけ、サッと刷いたような雲の、さらに下を飛んでいた。
空の中、肉眼で見ることができるもの、月ばかりじゃないんだ。
今日は、散歩らしい散歩をした。だから、帰りは、バスで帰ってきた。