女は強い。

夕刻、銀座、清月堂画廊へ。後藤亮子・澁江美代子二人展。
後藤亮子は、学生時代の古い仲間。幻想的で、清澄な画面を描き続けている。いつもは、春と秋に、属している団体の展覧会に出品しているが、今回は、二人展。

このような作品20点を出展している。多くは、3号から6号の小品。しかし、いずれも美しい。

微妙な色だ。

不思議な形、不思議な色。海ヘビを思わせるが、色を塗ってはヒッカイて、また塗ってはヒッカイて、とするそうだ。

何層にも色が塗られている。油絵の具で描いては、削ぎ、描いては、削ぐ、を繰り返す、という。多いものは、10層にも色が重ねられているそうだ。

後藤には内緒だが、一瞬、フォートリエかな、と思った。だが、違う。周りを見ると、フォートリエではない。まぎれもなく、後藤亮子独自の色だ。

これ面白い。色彩を発しているのか、隠しているのか、フォルムを創っているのか、拒否しているのか。
ここまできて、アレッ、何かヘンだぞ、と思われた方もおありだろう。そうです。タイトルを記してない。無題なら無題、と書いてあるだろう、と。実は、作品の写真は撮ったのだが、その題名を書きとめるのを忘れた。
もちろん、後藤亮子の20点の作品、すべてにタイトルがついている。オッ、面白いじゃないか、と思っているうちに、タイトルを記すのを忘れてしまった。後藤には、申しわけなかった。お許しを。
絵のみならず、言葉にも関係がある後藤亮子、20点それぞれに、短く凛としたタイトルをつけている。そのタイトルを列挙する。
風景、生活、日常、旅、五月、歌、一瞬、記憶、春、朝、風、遊、時、対話、断片、刻、楽、素、冬、基、の20。
上にあげた作品、どれがどのタイトルか、お考えいただきたい。案外、難しい。

これだけは、タイトルが解かる。「風景」だ。案内状に刷られていたものだから。
後藤亮子が、今現在到達した独自な絵だ。色づかいといい、フォルムといい。しかし、後藤の今の関心、マチエールを如何にするかに向かっているように思える。通過点にしかすぎない。まだまだ深化するだろう。

澁江美代子さんの作品も紹介しておこう。これは、「小さな向日葵」。
端正で、端麗に描かれている。

「車窓より」。
自然の草木のかなたに、高いビル群、その向うには雄大な雲。あり得るような、あり得ないような、幻想風景。油じゃなくては、こういう感じは出ない。美しい。
澁江さん、2点しか撮らなくて、ゴメンナサイ。後藤とは、長い付き合いなので、お許しを。
後藤亮子にも、ひとつ謝らなくてはならない。展覧会を紹介するブログのタイトルに、「女は強い」としたことだ。
打ち始めた時には、「清澄な色づかい」とか、「微妙な色、不思議なフォルム」というタイトルを打ちこんだ。だが、”以前から手をつけていたものもあるが、ほとんどはこの3カ月の間に描いたもの”、という話を聞いたのを思い出し、タイトルを変えた。
後藤亮子、3カ月ほど前、児童文学者の夫君を亡くした。その後、今回の作品のほとんどを描きあげた、という。昨日書いた茨木のり子もそうだが、女は凄い、強い。キーを打っているうちに、だんだんそんなことを思い、展覧会には相応しくないタイトルに変えた。
後藤亮子、長い付き合いに免じて、ゴメンナサイネ、だ。
今日の展覧会、古い仲間7〜8人で観に行った。当然のこと、その後、皆で飲みに行った。今までなら、早く帰る後藤、今日は長く付き合っていた。女は、強くなるんだ。関係ないかな。家に帰り、また飲みながら、キーを打っているうちに、酔ってきたのかな。