夜の蝉噪。

夜になり、蝉の声、一段と激しくなったようだ。
ジジジジジィ、と聞こえるヤツもいれば、濁音じゃなく、シに近い声で鳴いているヤツもいる。また、チに近く聞こえる鳴き声のヤツもいるようだ。この近辺、ほとんどが何処にでもいる、普通のアブラゼミばかりのはずだが、聞いていると、何種類かがいるようにも聞こえる。
窓外、日中でも物音はほとんどないが、夜間になればなおのこと、物音は何ひとつない。ただ、この時季、蝉噪のみ。
2,3日前の夕刻、外へ出たついでに蝉を少し探した。鳴き声はしていたが、蝉の姿は見られなかった。代わりに、蝉の抜け殻は幾つか見られた。ちょうど目の高さあたりのところにあった。何枚か載せよう。

何年もの間、地中で過ごした蝉、地上には夕方出てくるそうだ。他の虫などに見つかって食われないように。この抜け殻も、その前日の夕方あたりに地上に出てきたものかもしれない。

コイツは、脚を随分横につっぱっていた。

ついつい脚に気をとられるが、目玉もデカイ。昆虫だからな。気管の痕らしいが、背中にくっ付いている白い線もさまざまだ。

横から見てみた。
脚の先の爪(かどうかは、知らないが)が、しっかりと木の幹にくいこんでいる。
この様子じゃ、風が吹くか、大雨が降るか、あるいは、近所のワンパク坊主に見つかってはぎ取られるまでは、案外永くこの状態でいるのではなかろうか。
蝉の抜け殻、空蝉、蝉自体は飛び立っていった。空蝉を木の幹に残し、今、彼や彼女の生を謳歌している。
更けた夜に、蝉噪のみが続く。