5月場所千秋楽。

多くの予想通り、白鵬が全勝優勝した。これで、32連勝。
3日目を終わった時、今場所こそ11〜12番の星を挙げるぞ、と予測した稀勢の里は、ギリギリの勝ち越し、8番しか勝てなかった。今日も朝赤龍にいいように取られ、敗れた。いいかげんに見放したくなるほど、だらしない。しかし、稀勢の里を見放すわけにはいかない。だから、余計にはがゆい。
稀勢の今場所、滑りだしはよかった。3連勝ということばかりでなく、相撲内容もよかった。すべては、4日目の一番だった。それまでの3日間、すべてはたき込みでかろうじて勝っていた魁皇に、稀勢もまた、はたき込みで敗れた。考えてないんじゃないか、お前は、と思われるような一番だった。それで、終わってみれば、やっとの勝ち越し、情けない。
その魁皇、今日の一番で、通算1000勝を挙げた。千代の富士に次ぐもの。22年をかけての偉業、とすべての人が褒めそやしている。たしかにそうではある。幕内通算勝星も、幕内在位数も、歴代1位。場所前には、内閣総理大臣顕彰も受けた。立派である。
しかし、前場所、今場所と9勝をあげたからまだいいが、それまでは8勝どまりが続いていた。凄いが、ウーン、ということも考える。1年ほど前までは、「大関が8番や9番では、少し」、と言っていた北の富士も、最近は、そのようなことはまったく言わなくなった。「いや、立派なものです」、と言っている。やっと勝ち越し、という大関に誰も文句は言えなくなった。
連日、はたき込みばかりで勝っていた時、NHKのアナウンサーは、こう言っていた。「はたき込みにも、毎日変化がありますね」、と。魁皇だからこそ、許されることだろう。他の力士が毎日はたき込みばかりで勝っていたら、親方からドヤシつけられるだろう。今や、理事長の武蔵川さえ、魁皇は土俵に上がるだけでいい、というような意味合いのことを言っている。これも、大相撲。私のこのような思い、少数派であろうが。
もっとも、把瑠都が、かろうじて10勝、他の大関はみな9勝というていたらくなのだから、魁皇の9勝、立派のひと言につきる、とも言えるが。
13日目に優勝を決めた白鵬、14日目からは、黄金色の締め込みで出てきた。真新しい黄金色に輝く締め込みで。あの輪島の締め込みと同じ黄金色の。
敬愛するという輪島と同じ14回目の優勝を決めたら、輪島と同じ黄金色の締め込みを、と以前から考えていたのだろう。これから、オレの黄金時代が始まる、という白鵬の、言葉を用いない決意表明だな、と私には感じられた。
そう言えば、どことなく全盛期の輪島の身体に似てもいる。白鵬の方が、ややふっくらしているが。また、黄金色の締め込み、白鵬の白い肌によく似あってもいる。しかし、他に並ぶ者のいない、今の白鵬、その黄金色の締め込みに、秀吉の金色の茶室を思い重ねた。白鵬、唯我独尊にならねばいいが。
敢闘賞には、阿覧と栃ノ心が選ばれた。彼ら2人、国籍は違え、いずれもカフカス地域の出身だ。カフカスの民は、さまざまな抑圧を受けてきた民、ハングリー精神旺盛な民だ。もっと強くなるだろう。稀勢の里、いいかげんにしないと、彼ら2人にも抜かれるぞ。