世界初。

何日か前の夜、つけっ放しにしていたテレビから、「世界初の映像です」、というような声が聞こえたので画面を見たら、大きな滝の映像であった。一瞬、ナイアガラか、と思ったが違った。
新聞の番組欄を見たら、イグアスの滝であった。「満月の虹」、となっている。どうも、「世界初の・・・」、というナレーションは、満月の夜にイグアスの滝に懸かる虹を撮ったのが、世界初だということのようだった。たしかに、幅の広い大きな滝に、大きな虹が懸かっている。
きれいだな、写真をとろう、と思い、カメラを構えると、画面が移動し、このような画面に変わっていた。
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これだと、イグアスだかどこだか分からないが、いずれにしろ、満月の下で滝に懸かる虹は、こういうものなのだろう。青っぽくて、七色には見えないが。しかし、美しい。
その後、少し考えた。たしかに、イグアスの満月の虹の映像は、世界初であろう。珍しいものでもあろう。だが、珍しくもなんともない映像でも、その映像は、世界初なのではないか、と。
私たちが、ちっぽけなカメラで撮っている、何の変哲もない写真も、撮る人によってみな違っているのだから。ごく普通のものを撮っても、場所も違えば、アングルも手ぶれの具合も、みな違う。ということは、映像、写真としては、どのようなものであっても、みな世界初の映像となるのではないか。珍しいか珍しくないかは、別として。こじつけであること、重々承知ではあるが。
そんなことを考えていたら、暫く前、お月さんを撮ったことを思いだした。
ごく普通の町、何でもない夜、月がひとつ空にあった。満月でもない、ありきたりの月が、ポツンとひとつ。
何の変哲もないもの。ごく普通の状況の写真。だが、そのような状況では世界初、と言ったら、おかしいかな、やはり。笑われるのだろうな、また。

     吹風の相手や空に月ひとつ     凡兆