鳩山由紀夫と海兵隊。

谷垣禎一の口から出ると迫力がないが、言っていることは、その通りである。「公約違反である。総理は、甘く見ていた。今月末までに結着できなければ、退陣すべきだ」、とのことは。
今日、就任以来初めて沖縄入りした鳩山由紀夫は、こう言っていた。「日米同盟を考え、抑止力というこたを考えた場合、沖縄の皆さまにご負担の一部をお願いせざるを得ない」、と。知事の仲井真や、県議会議長や、名護市長の稲嶺や、市民の代表との会談、対話の中で。
普天間の移設先、最低でも県外、との約束はどうした、と詰め寄られた。当然だ。「たしかに、そう言った。だが、あれは党の公約ではない。党の代表としての私の考えだった」、と言う。また、「さまざま学び、抑止力という面から、一部を徳之島に移転するにしても、沖縄にもご負担いただきたくお願いしたい」、とも言う。
一見、正直だといえば、正直だとも見える。しかし、そうではない。はっきり言えば、谷垣の言う通り、鳩山の考え、甘かったんだ。
党首の考えが、党の約束でないなんて、誰が思うか。日米同盟が大事だ、と言いながら、米軍の抑止力の実態を理解していなかったなんて、どこの誰が考えるか。
日本国内の米軍基地の3/4が沖縄にある現状、その沖縄の負担を軽減しよう、と考えたことは、確かだろう。沖縄戦での、日本人の死者は20万人、その半数が一般人、ということまで、鳩山の頭にあったかどうかは解からないが。
また、世界一危険な基地と言われる普天間の移設先として、国外、最低でも県外に、との思いがあったことも、事実だろう。だが、それがどれほど大変なことか、それが、鳩山には解かっていなかった。あまりにも安易に考えていた。甘く考えていた。甘い言葉で約束をしてしまった。頼りない宰相である。
だが、ことここに至っては仕方がない。自らの考えを押し通すしかない。沖縄の皆さまには、大変申しわけないが、そうすべきであろう。沖縄ばかりでなく、まだ、徳之島や、アメリカとの厳しい交渉もあるが。それしか、道はない。たとえ次の選挙で大敗しようとも。
普天間の米軍は、マリーン、海兵隊である。陸、海、空、海兵隊、沿岸警備隊、のアメリカの5軍の中でも、海兵隊は、沿岸警備隊に次いで兵員が少ない。少数精鋭である。そのかわり、荒っぽいことで知られる。第1から第3まで、3つの遠征軍に分かれているが、唯一米国外に司令部を置くのが、第3海兵遠征軍、沖縄のキャンプ・コートニーに司令部がある。
第3海兵遠征軍のHPを見てみたら、こう書いてあった。<海兵隊の中で、唯一の常時前方展開遠征軍である>、と。さらに、そのカヴァーする範囲が広い。アジア太平洋から中東地域まで。イラクへの前線基地である、ということも肯ける。沖縄は、アメリカの軍事的な世界戦略にとって、要の基地であるんだ。
だが、アジアから中東までをカヴァーしている、ということを少し深く考えてみると、今やその要が沖縄でなければならない、ということもないだろう。沖縄である意味は、冷戦時代のものである、とも言えるのではないか。第一、普天間の飛行場自体、太平洋戦争末期、沖縄陥落の後、日本が降伏する前に米軍によって造られたものである。冷戦構造の中、それが要となり、65年もの間、続いてきた。
その冷戦構造が崩れ、ソ連も崩壊した現在、中国の軍事的台頭はあるが、アジアから中東までをカヴァーする要としての沖縄の位置は、低下しているのではないか。アメリカの世界戦略から見ても。私は、そう思う。
普天間基地の移設先、今はひとまず辺野古と徳之島に持っていくとしても、それと同時併行で、アメリカとの間で、国外への移転交渉を進めるべきであろう。第3海兵遠征軍司令部の国外移転交渉を。
それが、65年前の、いや、ソ連が崩壊した20年前の、さらに、今現在の、アメリカの軍事的世界戦略にとっても、合致したものであろう、と考える故である。