始まり、旅立ち、芽吹き、満開。

4月1日、年度始めということで、ニュース番組、入社式の模様を取りあげていた。
トヨタやJAL、といった今大変な会社や、それよりももっと大変な、中小企業の合同入社式の模様を。大卒者の5人に1人は、就職できなかった、とも。気の毒だが、自らの人生、自らの手で切り拓くしかない。挫折も、旅立ちのひとつだから。
夜遅くには、山崎直子さんが、フロリダのケネディー宇宙センターへ着いた。カメラに向かい、「行ってきまーす」、と言っていた。スペースシャトルは、今年で退役する。日本人としては、そのシャトルへの最後の搭乗者となる。実際に宇宙へ旅立つのは、あと何日か先となるが、これからは、隔離状態となるのだろうから、今日が、”行ってきまーす”、だ。
20日ほど前、強風で倒れた、鎌倉、鶴岡八幡宮の大イチョウの根のあったところから、無数の新芽が出ていることが、発表された。今日に合わせたわけではないだろうが、新しい芽吹き、再生への始まりだな。
今日、東京の桜は、満開となったそうだ。靖国神社も、千鳥ヶ淵も、上野公園も。おそらく、昨日行った目黒川も、であろう。こういうこと、みんなひと時に、ワッとくるんだな。
吉本隆明を読んでいたら(こんな書き方をすると、何かヤケにエラそうに聞こえるが、もちろん、そうではない。今の私が、吉本隆明の難しいものなど、読むワケがない。「上野のれん会」の広報誌に書いた、折々の文章を纏めた気軽なものだ)、桜、花見がらみで、こういうことが記されている。
<・・・・・本年四月初めごろ、永い間音信不通だった知人が、不忍池で溺死したという友人からの知らせがあり愕然とした。・・・・・死んだ知人はその友人と二人で上野公園でお花見をして、ほろ酔いのまま、一人で不忍池のほとりを散歩するといって、その友人と別れたあとだという。わたしはさまざまな疑問につきまとわれた。・・・・・あんな浅いところで溺死するだろうか?もしかすると自死ではあるまいか?その他疑問はさまざまに沸いてきた・・・・・>。
「上野のれん会」の広報誌に書いた、気楽な文章とはいえ、記されていることを引きうつしていくと、長くなってしまう。そう言えば、タイトルを書いていなかった。『日々を味わう贅沢』、2003年、青春出版社から出されたもの。”のれん会”のものだから、食べ物の話などが、気軽に語られているものだ。
夏だったが、15年ほど前、吉本隆明も、海で溺れて死にかけている。だから、花見のあと、溺れて死んだ知合いのことを思いだしたのであろう。途中を端折ると、その知人は、どうも、自死ではなかったようだが、続けてこう書いている。
<・・・・・小さい花束でも花屋さんに造ってもらって、それをもって静かな水鳥の影と水紋を見るために出掛け、帰りがけに弁天堂の裏のあたりで、花束を投げ入たいと思うのだ>、と。
どこかで読んだが、吉本隆明は、自分が死んだら、町会葬にしてもらいたいそうだ。東京の下町に住んでいる吉本隆明、町会からテントを借りられるそうだ。今年、86歳の吉本隆明、車椅子には乗っているが、頭の方はまだまだ健在。その日は、まだ先のことだろう。
”始まり、旅立ち、芽吹き、満開”、の4月1日、いつの間にやら、終わりの方にいってしまったが。