終わるわけがない。

1991年、ソ連邦が崩壊した時、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン、南カフカスの3カ国の独立は認められた。しかし、それらの国々よりももっと小さな、北カフカスの幾つもの共和国の独立は、認められなかった。チェチェンや、ダゲスタンや、イングーシや、北オセチア、その他のほんとに小さな国の独立は。
だいたい、カフカス地域は、独立した南カフカス3国と、ロシアに無理やり留め置かれた北カフカスを合わせても、その面積は狭い。狭い、狭い、といわれている日本の面積より、ほんの少し広いだけである。北カフカスだけでは、ロシア全土の、コンマ何パーセント、という狭い地域である。
何故ロシアは、この地域の小さな国々を独立させず、留めたのか。その理由はあろう。黒海とカスピ海への出口を確保、ということならば、別にこれら北カフカスの小国を抑えなくとも、事足りている。
100以上もの民族がいるロシア、少数民族の独立をいちいち認めていたら、収拾がつかなくなる、ということはあろう。また、逆に、少数民族、小さな国であるからこそ、取りこんでおいてしまえ、ということを考えたのかもしれない。もし、そうだとしたら、それはトンでもなく安易な考えであった。
カフカス山脈の南北に住む人々、何百年もの長い間、モンゴル、ペルシャ、オスマントルコ、というその時々の強国の支配下にあり、最後には、帝政ロシアの版図に組みこまれた。ロシア革命の時に、南カフカスの3国は、一旦は独立を果たすが、すぐまた、ソビエトにより併合された。
だが、南カフカスの3国は、ソ連の崩壊時に、ついに独立を勝ち取った。オセチアなど、まだゴタついている所はある。が、北カフカスの方は、悲惨だ。チェチェン独立派の抵抗運動は、プーチンにより、大分抑えられているようだが、首都・グロズヌイの町の写真などを見ると、町中、完全に破壊されている。
南も北も合わせ、カフカスほど、人種、民族、言語、宗教、あらゆるものが混在している地域は無いといわれる。さまざま、ばらばらな民族、言語、宗教、を持つ人たちがいる。その中で、ただ一点、共通することがある。ロシアに対する反感だ。カフカスに住むどの民族、どの宗教の人たちも、ロシアに対しての、拭いがたい反抗の気持ちを持っている。
中国に於ける、チベットやウイグルの人たちと、同じ感情である。抑えつけられるものではない。
モスクワの地下鉄での自爆テロで、多くの死傷者がでた。北カフカスのイスラム過激派、イスラム原理主義者の犯行だと言われている。おそらく、そうであろう。メドベージェフやプーチンは、犯行グループを突きとめ、殲滅する、と言っているが、仮に突きとめても、それで終わるものではない。
カフカスの問題、他民族を力で抑えつけることなど、幾ら抑えつけても、終わるものではない。
終わるわけがない。