人間賛歌、とは言うけれど。

スイッチの入れ忘れとか、コンセントの差し忘れなんてことは、誰にでもあることだ。
クラウンが出てきて、コンセントを繋ぐと、開会式の時には出てこなかった聖火台の柱が1本、ちゃんと出てきた。やはり、開会式の時には、ついウッカリ、コンセントを差し忘れたんだな。長野の金メダリスト、ルメイ・ドーンも、今度は点火できたし。ハハ、バンクーバーの開・閉会式のディレクター、洒落た演出をする。
IOC会長のジャック・ロゲは、「オリンピックは、人間賛歌にほかならない」、と閉会の挨拶の中で言っていた。こういう言葉には、誰も異は唱えられない。たしかに、そうですね、と言うしかない。しかしだ、それはそうだが、そればかりではないだろう。現実には。
開催国であることもあろうが、アメリカをも凌ぐ、最多14の金メダルを取ったカナダは、「表彰台を独占しろ(Own The Podium)」という選手強化キャンペーンを張り、この5年間で、100億円の強化費を投入したという。”表彰台を独占しろ”、とは、何ともエゲツナイ、としか言いようのないキャンペーン名だが、カナダに限らず各国、独占とまでは言わないまでも、自国選手に対し、”表彰台に立て”、とは思っているだろう。
IOCの会長が、いかに”人間賛歌”という建前を言ったところで、それぞれの国民は、自国の選手が勝つことを願っている。国別対抗戦なんだから。本音では。
アメリカ代表の長洲未来やロシア代表の川口悠子、それに、日米ハーフで、冬季五輪獲得メダル通算8個というアメリカ記録を作ったアポロ・アントン・オーノ、などは応援していたが。オーノの父親が、一度だけ画面に出てきたが、まぎれもない日本人の普通のオヤジの顔だった。国籍は違うが、日系の選手だから当然力が入る。
オリンピックで、ナショナリズムなんてケチなことは考えるな、なんていうことは無理だ。よっぽど人間のできている人か、へそ曲がりを除いては。もちろん、勝ち負けを離れた人間ドラマもある。それも面白い。ジャック・ロゲが言う”人間賛歌”に類するドラマも、オリンピックならではのものである。だが、自国選手の勝ち負けに一喜一憂するのも、オリンピック。何としても勝ってもらいたいのも、オリンピックだ。
少し横道に逸れた。各国の選手強化に戻る。
アメリカは、もちろんのこと、強化費も100億単位だそうだし、ヨーロッパの各国もそこそこかけているという。アメリカは、金メダルこそ、カナダとドイツに抜かれたが、メダル総計37個と、過去最多のメダルを取った。ドイツは、金10を含め、総計30個のメダルを取り、フランスは、総計11個。
イギリスも、100億単位の強化費をかけているそうだが、どうしたことか、今回取ったメダルは、スケルトン女子の金メダルただひとつだけ。きっと、イギリスでは、何やってんだ、という声がでているだろう。それとも、イギリスでは、オリンピックなどより、もうすぐ始まるサッカーのワールドカップの方が重大だ、とでも思っているのかもしれないが。
それよりも、韓国が、金6個を含む、総計14個、中国が、金5個を含む、総計11個、のメダルを取った。これは、凄い。日本は、金がなく、銀と銅のみの総計5個なんだから。
中国は、軍事費ばかりじゃなく、スポーツ強化費も大幅に増やしているんだろう。韓国は、国ばかりじゃなく、サムスンはじめ大企業のバックアップが大きい。翻って、日本はどうか。今日の朝日の朝刊に、何とも寒くなる記事が出ている。
何でも、長野五輪の黒字が45億円あり、それを毎年4億ずつ、選手の強化育成に使ってきたそうだが、それも底をついたそうだ。不況の影響で、大企業からの支援も打ち切られている。さらに、事業仕分けで、スポーツ予算は、削られている。どうすりゃいいんだ、という状況だ。
正規のスポーツ予算もあるんだろうが、なにより、”毎年4億ずつ云々”という記述に驚いた。その程度のものか、と思う。よほどの聖人かへそ曲がり以外、国民をこれほど楽しませてくれる選手を養成し、強化することに対し。これじゃ、勝てない。
昨日の、女子団体パシュートで銀を取った、田畑と穂積を抱える富山県の中小企業の社長のような人に頼っている、というのが、冬季スポーツの実情なのか。スケートのみならず、他の競技でも。
そこで、実情や内情を知らないことは承知の上で、少し乱暴なことを言う。
本当に必要なのかどうなのか解からないようなダムや、とても採算がとれないような道路や鉄道などを、ひとつ削れば、一桁どころか、二桁も三桁も違う金が出るだろう。その何分の一かでも、スポーツに振り向けるべきじゃないか。国を代表する選手を養成するために、使うべきじゃないか。
単に、国の威信、と言うことばかりじゃない。国民の精神衛生上も、それが役立つ。
今回、バンクーバーでは、メダルを5つ取り、前回のトリノより多い、との声もある。トリノでは、金メダルだったが、ひとつしかメダルがなかった、とある。ンン、と思い考えてみると、トリノで思い出すのは、荒川静香のイナバウアーしか思い出さない。それから言えば、増えたと言えば増えたが、やはり、違う。
そんなことを言うより、やはり、国として考えるべきだろう。強化策を。
思いつくままキーを打っていたら、今日のブログ、やや論理を欠くものになったかもしれないが。
何とも、もどかしい思いが、そうさせた。