0.02秒差。

残念だった。スケート女子団体パシュート(追い抜き)決勝、0.02秒差でドイツに敗れた。
日本選手団の団長、橋本聖子は、こう言っている。「金メダルを取れるチャンスは、めったにない。金を取らせてやりたかった。悔やんでも悔やみきれないが、みんな力を合わせて、よくやった。労ってやりたい」、と。昨日は、こうも言っていた。「死ぬ気でやってもらいたい。日本選手団、総力をあげて応援する」、とも。
オリンピックに限らず、世界の頂点に立てるチャンスなど、めったにあるものではない。強敵だといわれるカナダとロシアは、準々決勝で敗退している。準決勝では、そのロシアを下したポーランドを破った。頂点に立つ、金メダルを取る、千載一遇のチャンスだ。
決勝の相手ドイツは、強国カナダを破ったアメリカを準決勝で下し、決勝に歩を進めた。個人種目でもメダルを取り、後半に強い選手が揃っているという。日本は、先行逃げ切りをはかる作戦だという。
決勝、その通り、作戦通りの進行になった。残り3周で、2秒近くの差をつけた。残り1周では、差を縮められたが、まだ1秒の差をつけていた。スピードスケートで1秒の差は、大きい。勝った、と思った。残り200メートル、残り100メートル、残り50メートル、ぐんぐん追い上げられたが、まだリードしていた。
ゴールは、同時、テレビ画面では、よく解からなかった。だが、ドイツのタイムは、3分02秒82、日本は、3分02秒84。3分の勝負で、僅か、2/100秒差で負けた。おそらく、ゴール前4〜5メートルのところで逆転されたんだろう。
橋本聖子ならずとも、悔やんでも悔やみきれない。千載一遇のチャンスを逃した。それも、2/100秒差で。残念だ。しかし、白熱の試合をした。穂積雅子、小平奈緒、田畑真紀の3選手、よくやった。頑張った。残念ではあるが、素晴らしい勝負をしてくれた。
個人戦と異なり、団体戦は、国を背負っての闘い、見ている方も、どうしても力が入る。やってくれ、との思い、弥増す。
朝日新聞の電子版からの写真を2枚、転載しておく。

力走する、穂積、田畑、小平、の3選手。黄金のレーシングスーツの太股には、JAPANの文字が刷り込まれ、胸には、日の丸。団体戦でこのスーツを見ると、よけいに力が入る。
なお、写真の中央に見える、先頭の穂積がつけているグラブは、控えに回った高木美帆のグラブだそうだ。穂積雅子、中学生の高木美帆にもレースに参加させてやったんだ。

表彰式の後、左から、田畑真紀、小平奈緒、右に、穂積雅子。高木美帆は、出場のお姉さん3人が取った、銀メダルを首に掛けてもらっている。銀メダル3つも。
美帆ちゃんは、3人と一緒に、日の丸を背中に負ってのウィニングランもしていた。赤いほっぺの中学生、凄い経験をしたな。そして、日本中を和ませてくれた。
試合の後、穂積は、こういうことを言ったそうだ。「このメダルは、サブの高木美帆と、出場枠獲得のために、ワールドカップで共に戦った石沢志穂との、5人で取ったものだ」、と。
石沢志穂という選手の名は、初めて聞くが、おそらく、高木美帆が突然現れるまでは、日本チームの控え選手として、共に戦った選手だろう。石沢志穂ならずとも、こんな穂積の言葉を聞くと、泣けてくるよ。
高木美帆も、いいことを言っている。
「先輩たちが、オリンピックに賭ける思いは、全然違う。私は、まだメダリストにならなくて良かった。この思いが次に繋がる。ソチでは、団体戦のメンバーにも選ばれるように、自分の力で結果を出したい」、と。
高木美帆、しっかりした中学生だということは、知ってるが、何とも嬉しいことを言ってくれるもんだ。日本中、喜ぶよ。
さらに、あと一人。田畑真紀と穂積雅子の所属する会社の社長の言葉も、良かった。
「ダイチ」というこの会社、富山県の、従業員40人ばかりの地質調査の中小企業だそうだ。不況と公共事業の削減で、年商20億が半減、今の年商9億の企業だという。厳しい状況の中、社長の給与を削り、田畑と穂積を支えてきた、と言う。
その社長、こう言っている。「苦しかったけど、続けてきて良かった。特別ボーナスは、出せないけど」、と。この言葉も、泣かせる。
当たり前だ。仕事が半減し、年商9億の中小企業の社長に、ボーナスの心配までさせるな。オリンピックでメダルを取った選手へのボーナスなど、国で考えろ。メダリストには、国から報奨金が出ることは、知ってるが、ついでに、この中小企業の社長にも、感謝状を出したらどうか。国からの。”貴方も、よくぞ頑張ってくださいました”、という文面の。
団体パシュートでメダルを取ったばかりでなく、穂積雅子、高木美帆、そして、富山県の中小企業の社長、3人の言葉が、それぞれにジンときたので、やや気が高ぶったな、今日は。