対応力。

スキージャンプ・ラージヒル、決勝前の試技で、シモン・アマンの飛距離があまりにも伸びたので、スタートゲートが、ずいぶん下げられた、という。当然、助走スピードは、落ちる。
葛西紀明の1本目は、121.5メートルにとどまった。伊東大貴も伸びない。が、この2人は、2本目に進んだ。
1本目の飛距離が伸びず、2本目に進めなかった、竹内択と栃本翔平の、オリンピック初出場の若い2人は、「こんな低いゲート設定は、飛んだことがない」、と言っていたそうだ。
しかし、これは、おかしい。スタートゲートが、その時の状況で上げ下げされるのは、ジャンプの常識。ゲートを下げても、K点越えをする選手がいるから、ゲートを下げる。オリンピックで戦う選手が、低い設定のゲートでのトレーニングをしていない、ということに驚いた。選手の問題というよりは、コーチ、指導者の問題である。
どのような状態、状況でも、それに対応できるトレーニングをすることは、当然であろう。世界で戦う選手を作るには。選手の能力、技術を向上させる以前の問題ではないか。
この状況の中、優勝した、シモン・アマンは、1本目 144メートル、2本目 138メートルを飛んだ。2位は、アダム・マリシュ、3位は、シュリーレンツァウァー。何のことはない、金、銀、銅、先日のノーマルヒルと同じ選手だ。つまり、ゲートが低くなり、助走スピードがでない状況でも、強い選手、対応技術を持っている選手は、大きなジャンプができるんだ。
ソルトレークに次いで、ノーマルヒル、ラージヒルを共に制した、シモン・アマンは、身長173センチ、体重58キロ、という選手だそうだ。なんだ、日本人と同じ体格じゃないか。天性の才能もあるんだろうが、おそらく、どのような状況にも対応できるトレーニングを、日常しているに違いない。
さすが、葛西は、2本目には135メートルを飛び、8位には食いこんだ。残念ではあるが、予選免除となる世界ランク、トップ10には入っていないのだから、まあ、妥当と思わざるを得ないだろう。
こんなことなら、明後日行われる団体戦には、若い竹内か栃本のどちらかを外し、今日まで出場機会のない、ベテランの岡部孝信を加えてやれ。岡部なら、明後日どのような状況になろうとも、対応できるであろうから。
岡部は、今回の日本選手団の主将。今まで、主将を務めた選手が、競技に出なかったことはないそうだ。それもあるが、団体戦は、メダルの可能性、個人戦よりはある。その一端を主将であり、さまざまな修羅場をくぐりぬけてきた、岡部に託すというのも、一法ではないか。