紙一重。

紙一重を争う勝負である。
500メートルを35秒前後で駆け抜ける。1/100秒、時には、1/1000秒を争う。特に今回は、誰が勝ってもおかしくない、という金メダル候補が10人ほどいる、という。
日本は、長島圭一郎、加藤条治の二枚看板を持つが、現在の世界ランクの1位と2位は、韓国選手。アメリカのウォザースプーンもまだ健在。ヨーロッパにも強い選手がいるし、中国選手にも強いのがいるという。
私は、メダルを取るのは、長島か加藤かのどちらか1人、それも、その確率は、半々だろう、と思っていた。それが、2人ともメダルを取った。あり得ることだが、嬉しい驚きだった。
銀メダルの長島圭一郎は、「金じゃなくて、すみません」、と言っていたが、彼の本心、そうだろう。2本目こそ、最速の34秒87を叩きだし、「人生で一番熱いレース」、と振り返っているが、1本目が出遅れた。35秒11では、1/100秒を争うレースでは、少し苦しい。金が取れたはずだ、という思いで、今夜は眠れないだろう。
加藤条治は、「てっぺんが取れなくて、悔しい」、と言っている。そりゃ、そうだろう。天才・加藤、前回のトリノでは、本命と言われながら、メダルを逃し、今回は、秘かに期すところがあったんだから。「銅は、ぎりぎり合格かな、と思う」、とも言っているが、そんなワケはない。加藤も今夜は、眠れないだろう。
長島も加藤も、共に金を狙っていたのだから、悔しいだろうが、銀と銅でも、凄いことだ。本当は、私も、悔しいが。しかし、これが勝負というものだろう。
団長の橋本聖子は、「これで、責任をまず一つは果たせた」、と言っているし、スピードスケート選手団の総監督・鈴木恵一(懐かしい名前だ)は、「1個だけでも取ってくれ、と思っていたが、2つも取ってくれて」、と言っている。たしかに、そうだ。冷静に見て。
それにしても、金を取った、韓国のモー・テビョムという選手には、驚いた。世界ランク1位と2位の韓国の二枚看板、イ・カンソクとイ・グヒョクではないんだから。この2人は、4位(3位の加藤と、4位のイ・カンソクとのタイム差は、3/100秒だが、この差が大きい)と15位。2人のイ(李)も、今夜は、眠れないだろう。
このモー・テビョムという選手、500メートルよりも、1000メートルとか1500メートルとかを、得意とする選手だそうだ。韓国人も、2人のイ(李)が勝てず、第3の男、モーが勝ったことに驚いているだろうが、それよりも、中距離得意のモー、これから、まだメダルを取る可能性が高い、とも言える。
日本選手で、こういうことが起きるのは、可愛い小平奈緒か、より可愛い高木美帆か、と思いたいが、それは、ちょっと酷だろうな。いや、この2人は、別に勝たなくともいい。ただ滑れば、日本人は、満足する。
スキーのダウンヒル(滑降)、何日か前に触れた、金に最も近い男、ノルウェーのアクセル・スビンダルは、金を取れず、銀だった。7/100秒差で敗れた。これも、紙一重の勝負。何となしに、思い入れがあったので、残念だった。
しかし、スビンダルは、オールラウンダー。まだ、金メダルを取る可能性は、高い。
それより残念だったのは、スケート・フィギュアのペア。前日のSPで3位につけていた、川口悠子とスミルノフのペアが、今日のフリーで、2人とも尻もちをつき、メダルを逃がしてしまったこと。12連覇を為してきたロシア・ペアが、勝ちを逃がしたことには、どうとも思わないが、川口・スミルノフのペアが、メダルを逃がしたことは、とても残念。
優勝した中国のペアなど、何だか体操(氷上の体操といえば、そうであるが)のように思えるし、何より、川口のペアが、どのペアよりも、一番優美、優雅に思えたな、私には。尻もちをついたって。
川口悠子は、ロシアに渡った後、サンクトペテルブルグ大学(日本でいえば、モスクワ大学が東大ならば、サンクトペテルブルグ大学は、京大のようなものじゃないか。プーチンもここらしいし)で学び、卒論は、北方領土に関するものだそうだ。ロシアの地で、日本の北方領土問題、どういう論旨の論文を、川口悠子は書いたのであろうか。
そんなことを知ると、川口ペアの尻もち、より残念に思えてくる。