大企業の生き残り。

今日の朝日の夕刊、比重の差はあれ、柱が3本立っている。
”キリン・サントリー統合破談”、”「プリウス」リコールへ トヨタ SAIなど2車種も”、”日航・アメリカン提携維持”、いずれも日本を代表する大企業がらみの3本。
破綻し、再建を模索中のJALが、アメリカン航空との提携維持を決めたことは、当然だろう。
より大きなデルタ航空からも、秋波を送られていたが、航空連合の移籍には、システム変更など多額のコストがかかる。
おそらく、地元、京都で可愛がっている前原誠司から頼まれ、無給のJAL CEOを引き受けた稲盛和夫、3年後の黒字化を掲げているからには、リスクはとれない、と判断したんだ。長期的には、さほどのメリットはないそうだが、まずは建て直し、生き残らねばならない。晩節を賭けた稲盛の判断、正しいのだろう。
キリンとサントリーの経営統合交渉の破談は、よかった。
統合がなれば、売上4兆円に近い世界企業になる。売上9兆を超えるネスレにははるかに及ばないものの、コカコーラを抜いて、世界5位の食糧・飲料企業となる。
国内の市場は、限られている。どの業界でも、世界市場を目指すには、経営統合かM&Aしかない。
しかし、今回の話に限って言えば、上場企業と非上場企業の経営統合、統合比率でまとまらなかったということだが、それ以上に企業風土が違う。だから、私は、よかったな、と思っている。いや、キリンやサントリーの、世界市場での生き残りは、別にして。
キリンは、サントリーよりも大きい。しかし、上場企業の社長の権限など、しれているといえばしれている。逆立ちしたって、赤字を垂れ流すようなことには、取り組めない。そんなことをしたら、すぐに解任されること、必定である。
だが、オーナー企業の社長には、それができる。サントリーの2代目社長の佐治敬三は、「やってみなはれ、してみなはれ」、と言った。そこから、開高健や山口瞳が巣立ったし、赤坂のサントリーホールや、3年前東京ミッドタウンに移ったサントリー美術館が生れた。ただ、大阪、天保山のサントリーミュージアムは、この年末で閉鎖するようだが、あれは、場所も今イチだし、そのコンセプトも今ひとつ、だから仕方ない。
それにしても、トヨタがこのようにジタバタするとは、思いもしなかった。
3〜4日前、昨年就任した創業家出身の社長、豊田章男が会見し、「危機的状況だ」、と言っていたが、あのトヨタが、という思いがある。40数年前、私が、初めて買った車は、トヨタのパブリカという小さな車。それ以来、一時、ホンダの車に乗りかえたことが、一度だけあるが、今もトヨタのプログレ(この車、一般には殆んど知られていないが、スタイルから装備から、すべてオールドファッションに造られている車)である。
昨年来、トヨタは、アメリカでアクセルペダルの不具合でのリコール問題を抱えている。ヨーロッパでも中国でも。アメリカの運輸長官は、トヨタ問題で公聴会を開くとも言っている。ビッグ3は、トヨタ車からの買い替えには、1000ドルの割引きオプッションを付けているそうだ。トヨタ叩きをしている、とも思える。
そうであるからこそ、ブレーキ問題で、欠陥車ではない、との判断を下しつつも、リコールに踏みきったのであろう。出費など、幾らでも覚悟、まずは、ブランドイメージを保つ信用が大事、との判断を下したのであろう。
その判断、正しい、と思う。米独英仏韓、こららの国のさまざまな企業と闘うトヨタ、負けてほしくない。
社内留保は、数えきれないほどあろう。どんどん使え。そして、トヨタの信用を守れ。トヨタの底力を見せてやれ。
世界企業といえる、一番手の企業なんだから。