女性像と女性造。

今日、朝青龍は、ハワイへ行った。どこまでも抜けるようなハワイの青空の下は、心身のリセットをする場所として、とても相応しい。相撲の取り口同様、その行動、素早い。
で、私は、東博へ行き、「国宝 土偶展」を観た。
昨年秋、大英博物館で開催された「The Power of DOGU」展の帰国記念展。国宝3件、重要文化財23件、重要美術品2件を含む、全67件の土偶が展示されている。”国宝土偶、勢揃い!”と謳っている。
国宝に指定されている土偶は、3点。それが、ずべて顔を合わせた。だから、勢揃いなんだ。重文も23点も顔をだしているし、土偶のスーパースターの揃い踏みなんだ。
"ひとがた”の素焼きの土製品である土偶は、縄文時代の草創期、約13000年前まで遡るそうだが、今回は、約9000年前のものから、弥生時代の初め、約2千数百年前のものまでが観ることができる。狩猟、採集の時代から、ごく初期の農耕の時代にかけて、ということができる。
そのすべてが、乳房が付き、腹部や臀部が誇張された女性像である。お腹が、大きく膨らんだ像も多い。おそらく、多産、豊饒を祈る意味合いがあったんじゃないか、と言われているが、たしかに、そのこと、よく解かる。
顔の造形も、面白い。三角形のものもあれば、丸いものも、ハート形のものもある。目も、丸いものや、つりあがった直線状のもの、肌も、のっぺりしたものもあれば、線刻を施されたものもある。それぞれ皆、個性的な造形だ。
土偶は、今まで、1万7〜8千体発見されているそうだが、いずれも小さい。最大で、高さ45センチ。しかし、いずれも、下半身が大きく、足も太く、どっしりとしている。近年の若い女性が憧れる、細くて長い足、などというものとは、対極のもの。これが、本来の日本女性の姿である、と思ったな、私は。

東博内の看板。国宝3点と重文1点、土偶のスーパースター4点が出されている。
一番上は、”縄文のビーナス”といわれている、長野県棚畑遺跡出土のもの。
縄文時代中期(紀元前3000年〜前2000年)のものである。
お尻が、異常に誇張されている。
上から2番目のものは、”合掌土偶”と呼ばれるもの。とても、精巧に造られている。
青森県の風張Ⅰ遺跡からの出土。縄文時代後期(紀元前2000年〜前1000年)のもの。
手を合わせ、祈っている。豊饒のみならず、おそらく、病気平癒を祈る、ということもあったようだ。
3番目は、”遮光器土偶”。
青森県亀ヶ岡遺跡の出土。縄文時代晩期(紀元前1000年〜前400年)のもの。
看板の4点の中、これのみ国宝ではなく、重文であるが、土偶の中では、おそらく、最もよく知られたものだろう。
実は、先月書いた「芸術新潮」の「日本遺産」特集の中で、横尾忠則が、この”遮光器土偶”を「日本遺産」のトップに挙げていた。横尾は、こう書いていた。
<宇宙服を連想させる衣服、通信設備を内蔵したような頭部、さらに大きい眼はグレイと呼ばれる有名な異星人の顔にそっくりである>、と。たしかに、そう思える。
4番目は、”中空土偶”。
北海道著保内野遺跡出土。縄文時代後期(紀元前2000年〜前1000年)のもの。土偶の中、空洞になっている。
国宝は、どうしても、奈良とか京都とかに偏ってしまうが、これは、たしか、北海道唯一の国宝、だと思う。
以上が、土偶界のスーパースターの4人であるが、彼女たちばかりでなく、60数人の縄文女性像を観た後、数千年飛んで、今の女性が創る作品を、丸善の本店に観に行った。こちらは、”像”ではなく、”造”の方。
ガラス作家の、岡本明子作品展。そこにあった2点だけ、載せておこう。

「フュージング・ランプシェード」となっていたもの。
”フュージング”とは、ガラスとガラスの間に、銀箔などをはさみ、炉で焼いて高温で融かし合わせる技法だそうで、焼いた後に除冷して、研磨してもう一度炉で焼いて完成させる、というものだそうだ。
古風な鉄の台に付いた、ランプシェード、その一画、立体的なガラス加工が施されることにより、とても現代的な趣きを持つ作品に仕上がっている。

これは、おそらく、七宝の技法をガラスに応用したものだろう。ガラスを飴状にして。
このような作品を創っているということは、おそらく、ルネ・ラリックやエミール・ガレを意識しているのであろうが、私には、その色使いや構成、少し、平易に流れているように思われる。上の、フュージングのランプシェードに較べると、強く訴えるものがない。私には、そう見える。ゴメンナサイね、岡本さん。
そこで、もう1点だけ、載せよう。

これは、ステンドグラスのランプシェードであろう。
黒と白、また、その他の色もあるような。ジミといえばジミだろうが、これの方が、美しい。
ハワイに行った朝青龍、元気かな。今日の私、女性像と女性造の一日であった。