史上初 「日本遺産・ベスト10」、発表。

暮れの予告通り、「日本遺産・ベスト10」を発表する。
創刊60周年を迎えた「芸術新潮」が、気合いを入れた記念特大号に掲載した「日本遺産」の数々を、集計し、順位をつけ、検討を加えたものである。ただ、それだけじゃないか、と言われれば、そうであるが、リキが入る。
深田久弥の「日本百名山」はじめ、日本美術ベスト○○、とか、仏像○○選、とか、名画○○点、とか、名著○○冊、とか、名医○○人、とか、日本の中でこれがベスト○○だ、という企画は多いが、それらを全て包含した「日本遺産ベスト○○」、というものは、なかった、と思う。盲点であった。おそらく、史上初であろう。ま、それほど、リキむほどのものではないのであるが。
絵描きやもの書きなど、「芸術新潮」が選んだ各界の代表68名の投票、その集計に当たっては、原則として、同じ言葉、同じ事項は合算し、そうではないが、関連するものは、+α、とした。故に、同点の場合は、同順位であり、+αは、私の独断と偏見によって、ランキングした。
また、下の纏めは、順位、日本遺産名、合計(推薦)点数、推薦人名、である。
その結果、栄えある「日本遺産」ナンバー1は、なんと、”居酒屋”となった。。いかに、今現在、我が国を代表する68名の芸術家、もの創りに携わっている皆さんが選んだにしては、これはどうした、というか、やはり、バリバリの創作家は違う、なるほど、と感じ入るか、貴方は、どう思われようか。私は、少しズルイが、双方の立場に肯ける。
まず、取りあえず、ベスト10を、列挙する。
 1. 居酒屋            3 + α(3) 会田誠、黒川創、平松洋子 + 福岡伸一(3)
 2. 富士山            3        石川直樹、小西康陽、中村吉右衛門  
 2. 諏訪大社 御柱祭       3        赤瀬川原平、梅原猛、藤森照信
 4. 歌舞伎            2 + α(2) 小谷野敦、中村吉右衛門 + 原田治、いしいしんじ
 5. 銭湯             2 + α(2) 赤瀬川原平、黒川創 + 南伸坊、いしいしんじ
 6. 伊勢神宮           2 + α(1) 小山登美夫、平松洋子 + 養老孟司
 7. 日本語            2 + α(1) 中村吉右衛門、堀江敏行 + 片岡義男
 8. ひらがな           2        石川九楊、小西康陽
 8. 法隆寺<百済観音像>     2        加藤典洋、原田治
 8. 小津安二郎『東京物語』    2        狩野博幸、吉田喜重
 8. 築地市場           2        福岡伸一、内澤旬子
 8. 君が代            2        小池昌代、小西康陽
 8. 神田神保町古書店街      2        丹尾安典、津野海太郎
 8. 長谷川等伯<松林図屏風>   2        中条省平、吉田喜重
 8. 新宿ゴールデン街       2        津野海太郎、福岡伸一
上記の一覧、打った時には、整然としていたのだが、保存したらバラバラになって出てきた。参った。何度か編集をやり直したが、直らない。仕方がない。気分は良くないが、このままとする。見難いのは、ご容赦。
2位が2つ、8位が8つ、これは、全くの同位である。ベスト10とはいっても、昨年の「キネマ旬報」創刊90周年の時の、映画のベスト10同様、今回は、合計15となった。
1人5点、中には2点か3点しか挙げていない人もいるので、平均すると4点程度。だから、総数270〜280の「日本遺産」が挙げられた。それにしても、一筋縄ではいかない人が多い故か、票は割れた。2票以上は、上の15のみである。
1位の”居酒屋”は、3票であるが、+αの福岡伸一の票が効いた。この福岡伸一なる人は、私は初めて知ったが、分子生物学者。「変わること、それが変わらないための唯一のしくみ」、というタイトルの「日本遺産」推薦の理由を書いている。そして、"新宿ゴールデン街"と共に、彼が挙げたのが、”三軒茶屋のみ屋街”、”渋谷のんべい横町”、”大井町駅ののみ屋街”、と貴重な票を使っている。DNAの構造解明とのみ屋街は、深い関係があるらしい。
単刀直入、”居酒屋”、とした3人は、お察しの通り、これぞ日本の独自な文化だ、という理由。たしかに、欧米にものみ屋やのみ屋街はあるが、日本の居酒屋とは、違う。韓国ののみ屋に、近いものはあるが。また、アジアの国にものみ屋やのみ屋街はあるが、屋台に近いものが多く、日本の居酒屋とは、少し違う。
そういう意味から言えば、たしかに、居酒屋は、「日本遺産」第1位に選ばれて、おかしくないかもしれないな。
もちろん、この場合の”居酒屋”とは、焼き鳥やおでん、モツの煮込みにお新香、お通しは、せいぜい300円以下の店を指す。赤提灯に縄暖簾、という店なら、言うことなし。肯くよりなし。
それでこその、「日本遺産」第1位。
第2位には、同点で”富士山”と”諏訪大社の御柱祭”が入った。
「世界遺産の日本版」とは一線を画す、という「芸術新潮」の漠然とした思いは思いとして、やはり、富士山がきた。
富士山は、「世界遺産」には、ゴミ問題があり、選ばれてはいないが、やはり、富士山だ。新幹線に乗って、天気が悪く、富士山が見えない時には、新幹線代負けてくれ、と思うもの。肯ける。
同点の”諏訪大社の御柱祭”は、映像でしか見たことがない。だから、3人もの人が推しているのに、驚いた。今年は、7年に一度(実際には、6年周期)の式年祭の年、だという。
4位以下は、2点。しかし、+アルファでランク付けをした。
4位とした”歌舞伎”は、+αの原田治(イラストレーター)が、十一代目団十郎の歌舞伎『助六由縁江戸桜』と限定しているのと、”歌舞伎座”という票があった故である。
それと変わらぬ5位の”銭湯”は、その推薦理由、トップの”居酒屋”と同じようなニュアンス。+αの南伸坊は、”銭湯のペンキ絵”とし、いしいしんじ(作家)は、”直島銭湯「I❤湯」”としている。直島は、安藤忠雄設計の地中美術館がある、ベネッセのアートサイト。この”直島銭湯「I❤湯」”も、大竹伸朗が創ったものだという。つまり、大竹の作品。それ故、通常の銭湯とは、少し異なるので、+αとした。
6位の”伊勢神宮”は、当然だ。外宮にしろ内宮にしろ、お伊勢さんの境内に入ると、身が引き締まるもの。神々しいもの。なお、+αの養老孟司は、”伊勢神宮の森”、である。
7位は、”日本語”。”岩波書店の『広辞苑』”を挙げていた片岡義男を+αとした。片岡は、「日本語というタカラモノ」、と言っている。
同点の8位以下についても述べるつもりであったが、眠くなった。
これらについては、機会を改めて記すこととする。いや、ベスト10ばかりじゃなく、面白いものを挙げている人もいるので。それらについても、「日本遺産」の補遺として、暫く連載しようと思う。
明日は、東京ドームへ「ライスボール」を観に行くので、書けないが、明後日あたりから、折りをみて。