朝・読、そのニュアンス。

晴れ。
昨日の閣議で、2010年度予算案が決定した。今日の一般紙の朝刊、もちろん大きく報じている。
朝日新聞と読売新聞、読み較べる。1面から3面、ほとんど予算案がらみの記事だが、やはり、そのニュアンス、当然のことながら、少し違うな。遣っている語彙から見ても。
1面トップ、朝日は、タテ見出しのみで、「過去最大92.3兆円」、「国債44.3兆円 税収超す」、さらに、「公約行程表見直し」、とある。対し、読売の1面トップの見出しは、ヨコ見出しで、「歳出最大92兆2992億円」、とあり、タテ見出しで、「国債最悪44兆円」、さらに、「公約優先 借金頼み」、とくる。
これは両紙、明らかに違う。
トップの見出し、ヘッドラインは、横に一本大きく通し、それを、縦で補う、という方が、より強い印象を、読み手に与えるものだ。読売のヘッドラインの方が、強い。また、92.3兆円、というより、92兆2992億円、と細かい数値まで出す方が、その印象、より明確になり、強い。
朝日は、ややボカシ、読売は、”こんなにも膨らんだ予算を組んだんだぞ、民主党の連中は”、という意味が、その裏に隠されているのが、よく解かる。
国債に関しても、そうだ。
朝日は、その裏に、”税収が少ないんだから、仕方ない面もあるんだ”、という意味が隠されているようだな、ということが解かる。対し、読売は、「国債最悪・・・」、と”最悪”、とくる。単刀直入、”こんなに国の借金を増やしやがって”、だ。「借金頼み」、という身も蓋もない言葉も使っているし。
反自民、親民主の朝日と、反民主、親自民の読売、その立場がよく表われているな。今回の予算案報道に関しては、読売の方に分があるが。
2面、3面も、朝日は、「予算改革 序の口」、「配分激変 人へ鮮明」、との見出しもあるが、それと共に、「仕分け効果中途半端」、「目標後退 負担増も」、と書かざるを得ない。対し、読売は、「マニフェスト失速」、「甘すぎた見通し」、「ムダ減らし限界」、さらに、「虚構に満ちた政治主導」、と攻めに攻める。
じゃあ、社説はどうか。
朝日のタイトルは、「仮設住宅を百年住宅へ」。なんじゃこりゃ、一瞬、冗談じゃなく、家の問題かと思った。もちろん、今度の予算案を、プレハブの仮設住宅にたとえ、目指すべきは、百年、二百年の長きにわたって使える住宅にしろ。その為には、、堅固な土台や柱を、つまり、安定財源が欠かせない、と述べ、消費税にも触れてはいるが、成長戦略を、と説く。
読売のタイトルは、「公約優先では財政がもたない」。公約がどうのこうの、と言ってるが、国と地方の長期債務、10年度末で862兆となり、GDPの1.8倍となるんだ。どうするんだ、と述べる。そして、次の衆院選まで、消費税を上げない、と言ってるが、来年の参院選の後には、消費税を引き上げの議論を始めろ、と説く。
ただ、読売の社説の中で、「3兆円のムダを省くといって事業仕分けをしていたが、実質的に省いたのは、1兆円に過ぎない。つまり、今までも、さほどのムダはなかったんだ」、と記しているが、これは、何が何でも、少し言いすぎであろう。今までの、自民擁護の気持ちは解かるが。
それはさておき、朝日の説く、環境、医療・介護、の分野、また、膨張するアジアの内需に対する成長戦略も必要だが、読売の説く、消費税の引き上げをどうするか、の問題は、避けて通れない。隠棲者には、なんだかだ値上げは困るが、そうは言っても、私も、そう思う。焦眉の急、の問題であろう。安定財源確保の為には、消費税の引き上げ、やむなしだ。
朝日と読売の記事、そのニュアンスの違いは、まあ、解かっていることだが、私にとって面白かったのは、参院選がらみの記事だった。朝日と読売、その言葉づかいは違っているが、言っていることは、同じなんだ。
朝日は、「参院選控えアメとムチ、自民寄り業界露骨に冷遇」、とし、読売は、「露骨な参院選対策」、と記している。
小沢一郎が総理官邸へ乗り込んで盛り込んだ、整備新幹線や農家への戸別所得補償、また、医師会や建設業界向けの予算のことを指しているんだ。たしかに、参院選に向け、見え見えの対策も多いものな。
その小沢は、今日、兵庫県の尼崎で、こう言っている。
「小沢一郎が一番悪い、という報道ばかりだが、誰かが悪者にならなければいけないので、一向に構わない」、と言い、さらに、借金増、との報道に対し、「マスコミは、まったく勉強不足。無知な報道だ」、とも言っている。
小沢らしい。朝日や読売ばかりでなく、毎日、日経、産経、その他すべての新聞、また、諸々の雑誌から叩かれても、正面突破、小沢は、小沢の道を行く。
気には食わない男であるが、興味深い男ではある。