チベット美術展。

晴れ。
一昨日観に行ったのだが、忘年会の帰りが遅くなり、昨日は、片山右京の判断問題に惹かれたので、2日遅れの上野の森美術館でのチベット展。
「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」と題された今回のチベット仏教美術展、チベット文化を総合的に紹介する、わが国初の展覧会、と記されている。
チベットの仏教美術の展覧会は、今まで何度も開かれているのに、なぜ初なのか、と思い、古い図録を探してみる。
3年前、北浦和の埼玉県立近代美術館でも「マンダラ」展が開かれているが、この時の出展品は、大阪の国立民族学博物館の収蔵品によるもの。また、1997年、今は無くなった東武美術館で開かれた「天空の秘宝 チベット密教美術展」の、2分冊ケース入りの図録も出てきた。
10年以上も前のことで、記憶も薄れているが、この時は、世界中あちこちの美術館や博物館のチベット仏教美術の名品を集めた世界巡回展。ドイツ、スペインを回って、日本へ来たもの。今改めて図版を見ても、素晴らしい作品がある。別冊の解説も、中沢新一、頼富本宏、といった密教学者に加え、欧米の学者、研究者が、書いている豪華メンバー。
では、今回の”初”は、何か。実は、主催者の中に、中華文物交流協会、中国チベット文化保護発展協会、が入っているからである。つまり、中国政府が後押ししている展覧会、ということができる。
その中国側の主催者の挨拶に、「中国は、古くから統一された多民族国家であり、その悠久の歴史を有する、広く深淵で、豊かで多彩な、一体化した中国文化も、各民族の独特な文化が集まって形成されたものなのです」、とある。
その言わんとすることは解かるが、それを解からせる為に、このように長々と言わなければならないところに、今の中国の現実があることも、よく解かる。
それはさておき、たしかに素晴らしい作品が並んでいる。出展点数は、そう多くはないが、今までのチベット美術展とは、少し趣を異にする。
なにしろ、ポタラ宮や離宮・ノルブリンカ、チベット博物館などの名品を持ってきているのだから。中には、国家一級文物というものもある。日本でいえば、国宝とか重文とかというものだろう。
世界中の美術館や博物館からの名品を集めた東武での展覧会も凄かったが、金銅仏にしろ曼荼羅、タンカにしろ、本家本元からの展覧は、やはり違う。チベット仏教美術、堪能した。
ところで、私は、チベットには行ったことがない。もうずいぶん昔から、ラサに行きたい、と思ってはいるのだが、身体的理由で行けないでいた。だが去年初め、意を決し、酸素ボンベを持って、友人たちと、ラサへ行こう、と話していた。しかし、そのすぐ後、ラサの騒動が起こり、中国政府の対応に、チベットなんかに行くものか、中国へも行くものか、と思い、行くのをやめた。
しかし、チベットへの憧れは強い。だから、チベット的世界へは何度か行っている。私が、リトル・チベットと呼んでいる所に。
カトマンドゥから車で30分ほど行った所に、ボダナートという小さな町がある。亡命チベット人が多く住む町だ。
町の中心に、ネパールでは一番大きなストゥーパ(仏塔)がある。ストゥーパの周りには、マニ車が連なっている。チベットの人が、マニ車を回しながら、時計周りでストゥーパの周りを廻っている。私も、それを真似て、廻る。その外側、ストゥーパの周りには、食べもの屋や、お土産屋、服屋、古道具屋、あらゆる店が軒を連ねる。
ボダナートには、カトマンドゥに行く度に訪れているが、ちょうど1年前、去年の今頃、行った時の模様を載せておこう。

ボダナートの中心、ストゥーパ(仏塔)。大きい。高さ、40メートル近くある。
目玉が四方を睨んでいる。タルチョが、四方になびいている。
下の方の、赤い布の奥にマニ車がある。それを回しながら歩く。

赤紫色の僧衣を着た若いお坊さんが、ストゥーパの周りを歩いている。

ストゥーパの周りには、小さいお堂もあり、若い人もおばあさんも、皆お参りしている。

こういう大きなマニ車があるお堂も、多くある。その周りには、仏画、曼荼羅が描かれている。
チベット人のおじいさんが、何やらブツブツ言いながら、大きなマニ車を回していた。

ストゥーパから少し離れると、このような通りになる。
亡命チベット人が多く住む所に近くなる。

読経の声が聞こえるので、その方へ行ってみると、小さなお寺があり、体のデカい赤紫色の衣を着た若い男が立っていた。
中へ入ってもいいか、と聞くと、どうぞ、という。写真を撮ってもいいか、と聞くと、いいと云う。
中では、両側に3〜4人のお坊さんが並び、お経をあげていた。

チベット仏教のお寺の中は、極彩色。

正面の仏さまの下には、ダライラマの写真があった。少し分かり辛いが、中央のモノクロの写真。
チベット人にとっては、ダライラマは、絶対神である。

内部のあちこちには、このような仏画、曼荼羅が描かれている。

チベットの人が多く住む地域、チベット仏教のお寺は、幾つもある。
これは、別のお寺。先ほどのお寺より少し小さいお寺だが、やはり、両側に何人かのお坊さんが並び、お経をあげていた。
お寺を出る時には、すぐ横のドネイション・ボックス(お賽銭箱)へ、100ルピー札を入れ、手を合わせて出る。ありがたいことだ。

帰り道、道端に、ダライラマの写真パネルが掛っていた。
おそらく、売っているのであろう。
チベットには、行ったことがないが、私が好きなリトル・チベット、ボダナートの様子である。
チベット展とは、少し離れたが。