引退。

曇り。
阪神の赤星憲広が、今日、突然引退した。ニュースで会見の映像を見たが、無念だったろう。
野球は、シーズン中でもごくタマにしか見ないし、特に赤星のフアンというワケではないが、小柄、俊足、粘っこいバッティングの、いい選手だということは、知っている。職人という言葉が当てはまる選手、という印象がある。
首を痛めていたことも、知っていた。野球選手としては、小柄であったが故であろうが、ファイターであった。9月12日の横浜戦でのダイビング・キャッチが、命取りになったようだ。その映像も見たが、イチローなら、あのようなダイビング・キャッチは、決してしない。
イチローは、凄い選手だ。バッティング技術も桁外れに凄いが、野手としても、凄い。メジャーでも、毎年ゴールデン・グローブに選ばれている。だが、イチローは、ダイビング・キャッチはしない。スライディング・キャッチしかしない。ケガをしない為である。賢い。
しかし、そこのところが、私が、今ひとつ、イチローが好きになれない理由なんだ。アメリカのメディアも、時折り、そのことを突いているが、私も同感だ。赤星からは、少し離れたが。
赤星は、大学を出た時、プロからの誘いがなかったので、社会人野球にいっている。阪神入団は、2001年。その時も、阪神のスカウトの目には、かからなかったようだが、赤星を見た当時の阪神の監督・野村克也が、阪神へ入れたそうだ。野村のジイさん、野球選手を見抜く目は、たしかに凄い。
それから9年、赤星は、年俸2億5千万の、阪神を代表するスター選手のひとりとなった。33歳、まだまだやれる年である。しかし、決断した。この10日ほど考えて決めた、という。
首のヘルニアと言われていたが、医者の診断は、中心性脊髄損傷。今度痛めたら、命にかかわる恐れもある、と医者に言われたそうである。無念だったろう。だが、命には代えられない。苦渋の選択、決断だったろう。
阪神監督の真弓は、チームにとって最高の功労者、と言っているが、同僚の金本は、野球人生より、人生そのものが大事、赤星の選択、間違いではないと思う、と言っている。金本の言、その通りだ。
年俸2億5千万を棒に振ろうが、スター・プレイヤーという居心地のいい場を捨てようが、それがいい。
俊足の赤星、何度も盗塁王になっているが、2003年から、盗塁数と同じ数の車いすを、病院や施設に贈っていたそうだ。今年は、31台。それを含め、7年間で贈った車いすは、301台となったそうだ。
「これが最後となると、寂しいですね。本当はあと100台か200台ぐらいプレゼントできるかな、と思っていたんですが」、と語っている。
十分だ、赤星。車いすにしろ何にしろ、次のスター選手が受け継げばいい。そういうヤツ、出てこいよ。
今年、引退した野球選手は、何人もいる。中日一筋の立浪和義、ロッテからメジャーに行き、またロッテに戻った小宮山悟、広島、巨人、西武と渡り歩いた江藤智、巨人時代の印象が強い清水崇行、など名の知られた名選手も多い。
しかし、彼らは、概ねピークを過ぎた選手である。赤星のような、まだまだという選手とは、その引退の様相、異なる。
引退会見の中で、赤星はこう語っている。「100%のプレーができないと考えた時点で、プロとしては、身を引くべきだ、と考えた」、と。
まさに、その通りだ。赤星とは較ぶべくもない立場、状況であった私も、仕事からの引退、いつ身を引くべきかを考えた時、そう思い、引退した。赤星の気持ち、よく解かる。
ただ、赤星は、スポーツ選手とはいえ、年若い引退、無念ではあろうが。