九州場所、千秋楽。

晴れ。
一年納めの九州場所、その千秋楽。白鵬の優勝は、前日に決まっていたが、結びの一番以外は、つまらぬ相撲が目についた。
14戦全勝の白鵬と、前日まで3連敗の朝青龍の一番は、土俵の主役が、確実に変わったことを、印象づけた。立会い、朝青龍は、白鵬に左上手を与えず、いい形に持ちこんだ。が、ここまでだった。
あわてぬ白鵬、ついに左上手をとり、引きつけて寄り、堪えるところを、上手投げで朝青龍を引っくり返した。しかし、相撲自体は、見応えがあった。両者の力の差が出たというだけだ。
白鵬、全勝で、12回目の優勝を飾る。白鵬、盤石の横綱となった。大鵬と同じタイプの、負けない横綱となった。確実に、大横綱への道を歩いている。
しかし、その全勝優勝より凄いのは、年間勝星の数。86勝をあげた。90戦して、86勝だ、凄い。
今まで、年間勝数を80以上あげている力士は、5人しかいない。大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花、のいずれも一代年寄りを許された大横綱と、84勝という今までの記録保持者の朝青龍しかいない。
大鵬以下、大横綱4人の名前を見ても、また、86勝というその数(大横綱4人は、いずれも80〜82勝)を見ても、朝青龍の記録も凄かったが、今、白鵬の力が如何に抜きんでているかが解かる。
それはそうだが、はたして、それだけか。違う、と思う。他の力士が弱すぎる。お前は、相撲のプロか、ホントに強くなろうとしてるのか、星勘定のことしか頭にないんじゃないか、と思わざるを得ない相撲が目につく。今日の取り組みから、二番だけ記してみよう。
まず、鶴竜対稀勢の里の一番。鶴竜がはたき込みで勝った。これから大関を狙おうという鶴竜、なんたる相撲をとったんだ。鶴竜は、今場所は、関脇だが、この日まで6勝8敗、負け越してはいるが、7勝ならば、来場所小結に留まる可能性がある。だから、なりふり構わぬ注文相撲を取ったんだ。
解説の北の富士も、あれはいかん、と言っていたが、鶴竜贔屓の私もそう思う。これからの力士の鶴竜、平幕に落ちてもいいじゃないか。目先のことばかり考えるな、と言いたい。注文相撲なんてことをしていると、強くはならない。残念だ。
もう一番は、魁皇と琴光喜の一番。これは、初めから結果が解かっていた。立会い、琴光喜の左腕をとった魁皇が、簡単に小手投げで、琴光喜を土俵にころがした。解説者の北の富士も舞の海も、アナウンサーから促されるまで、何も言わなかった。
当たり前だ。相撲の素人の私でも、解かる。魁皇が、相手の腕をとり、小手に振ってくることなど、長年、魁皇と相撲を取っている琴光喜が、知らないわけがない。これで、両大関、8勝7敗。魁皇は、今年6場所、すべて8勝7敗となる。
琴光喜、お前は、相撲のプロか。それとも、相撲のプロだからこその、一番なのか。白鵬のことなど、頭にないのか。力の差はあるが、それでも琴光喜は、白鵬とは、四分六くらいの勝負のできる力士。ああ、という感、禁じ得ない。
それはともかくとして、魁皇。今場所で、幕内通算勝星、806勝となった。北の湖を抜き、千代の富士の807勝にせまる記録である。それは、凄い。しかし、魁皇にも思い入れがある私には、何とも複雑な思いもある。
入幕以来、16年余、積み上げてきた勝星である。しかし、この1年も、毎場所8勝7敗の成績であった星でもある。大関であるだけに、複雑である。
今場所は、カド番記録を更新中の千代大海が、負け越し、来場所関脇に陥落する。来場所も、6敗するまでは、出ると言っている。中日にも記したが、痛々しい。引退してほしかった。
子供の頃からケンカが強く、大分の悪ガキであった千代大海(彼が、相撲取りになる為、東京に行った時には、町の人たちは、あの悪ガキが町から出て行ってくれた、と言って喜んだ、という話を、昔、読んだことがある)も、私の好きな力士のひとりである。だから、余計にそう思う。
相撲の世界は、複雑怪奇。だから、面白いのでもあるが。
夜の、内藤大助と亀田興毅の、WBC世界フライ級タイトルマッチも見たが、亀田興毅が勝って、新チャンピオンとなった。内藤も、魁皇と同じ35歳、しかたないだろう。
それにしても、興毅は、思いのほかクレバーな試合運びをしていた。WBCルールを、よく研究していた、と感じられた。
でも、フリーノックダウン制やオープンスコア・システムはいいが、各ラウンド、アグレッシブ度やディフェンス度で差をつける、というマスト・システムという採点法は、なんだかアマチュア・ボクシングの採点法のようで、プロの試合には、どうかな、と私には思えた。
だから、ガードを固め、カウンターを狙う、という亀田興毅陣営の作戦は、的を射ていた。鬼塚はじめ解説者の元世界チャンプの面々は、いい試合だったと言っていたが、私には、少し物足りない試合だった。プの試合としては。