タバコ1箱1000円。

曇り。
昨日の立花隆のがんドキュメンタリーから、数日前の全ページ広告を思い出した。
3日前の朝日に、「私たちは、「タバコ1箱1000円」を求めます。」という意見広告が出た。日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、はじめ、健康何々だとか、がん何々だとか、禁煙何々だとか、たばこ何々だとか、といった団体や国会議員が、賛同者として、ズラッと並んでいる。
「「タバコは体に良くない」 それは誰もが知っている。」、「「簡単に止められない」 それは本人が一番知っている。」、「タバコが1箱1000円になれば、9割以上がタバコを止めるという報告もあります。」、というコピーがある。ウーン。
今、タバコを吸っているヤツは、野蛮人、文明人じゃない、と言われてから久しい。たしかに。
タバコの箱には、大きな金文字で、「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります」とか、「肺気腫を悪化させる危険性を高めます」とか、「心筋梗塞の危険性を高めます」とか、といった言葉が印刷されている。そればかりでなく、「たばこの煙は、あなたの周りのひと、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします」、といった言葉も刷られている。
商品そのものに、これほどネガティブな言葉を刷りこんでいる商品は、おそらく、タバコ以外にはないだろう。
それでも、お前は、タバコを吸うのですか、このバカものが、とタバコを買う度に言われているようなものだ。とほー。
健康面や公序良俗面だけじゃなく、今度は、経済面からも、バカものどもへの締めつけを、計ってきたわけだ。1箱1000円になれば、吸おうたって、おいそれとは、吸えないだろう、と。ウーン、たしかに。
日本医師会などの、全ページの意見広告には、諸外国のタバコ1箱あたりの価格と税額、というグラフも出ている。
グラフ中、一番高いのは、ノルウェーで、タバコ1箱1187円、内税額903円、次いでイギリスで、1109円、内税額848円、以下主要国では、アメリカ(ニューヨーク)987円(税額592円)、フランス751円(税額604円)、ドイツ659円(税額499円)、そして、日本は、300円(税額189円)、となっている。
2年近く前、一昨年の12月半ばから、昨年の1月半ばにかけて、ひと月ちょっとヨーロッパを歩いていた。何カ国かの安宿を泊まり歩いていたが、丁度為替レートが今より、30%ぐらい円安に振れている時期で、各国何でも高かったが、特に、タバコの高さには、解かっていたとはいえ、驚いた。
値段が高いばかりじゃなく、喫煙環境が、何年か前とはガラッと変わっていた。安宿とはいえ、ホテル内でタバコを吸えるところは、ほとんどない。中で一か所のみ、ロンドンの安宿で、灰皿はないか、と言ったら、小さなアルミホイルの皿をくれたところがあったが、これは、例外中の例外。だから、どこのホテルでも、携帯灰皿を使って、こっそりと吸っていた。
しかし、アムステルダムのホテルでは、緊張した。アムスでは、安宿がとれず、この旅行中唯一4つ星のホテルに泊まったのだが、部屋に入ると、目につくところに、”No Smoking Policy”と書いたプレートが掲げてある。見ると、これに違反した場合には、クリーニングチャージとして150ユーロをいただきます、と書いてある。
150ユーロといえば、当時の為替レートでは、25000円近い。貧乏旅行をしている者としては、痛い。きれいないいホテルだから、ヒョットして見張られているかな、とも思った。が、携帯灰皿で、こっそり吸った。チェックアウト時には、何も言われなかったが、この時には、少しビビッた。
それより驚いたのは、ロンドンからベルリンへ飛ぶ時のこと。ヒースローの免税店で、マールボロの一番安いカートンを買った。免税で、23ポンドという値段(当時の為替レートでは、5000円強)にも驚いたが、エアーチケットを見た免税店の店員から、ベルリンへ行くならタバコはダメだ、と言われたのにも驚いた。
酒の持ち込みができない国は、知っているが、タバコが持ち込めないところがあるなんて、この時初めて知った。タバコを巡る環境、状況は、年々厳しくなっている。
ところで、私が知っている国の中では、フランス人と中国人に愛煙家が多い。日本人と違い、彼らはタバコの根元まで吸う人が多かった。カフェの片隅で、シックなマダムが、短くなるまで吸っている光景も、パリの点景のひとつだった。が、そのパリでも、今、カフェの中ではタバコは吸えない。タバコは、外のテーブルでしか吸えない。嗚呼。
そのパリでも、タバコは高い。マールボロが、7.30ユーロ、ゴロワーズのロングが、3.70ユーロだった。近所のスーパーで、エビアン1リットル1本、500cc1本、缶ビール1本、ワイン1本、を買っても、たしか、5〜6ユーロだったから、タバコの高いことが、よく解かる。
それはともかく、日本は、たしかにタバコの値段は安い。しかし、今、300円のものが、1000円になったら、どうなるか。大変困る。日本医師会をはじめとする意見広告のように、9割の人が止める、止めざるを得ない、ということになるかもしれない。
私も、そうなるかもしれない。私は、だいたい日に1箱半吸っている。1日のタバコ代大まかに言って450円、1と月では、約1万3〜4千円である。それが、1箱1000円になったら、1日1500円、1と月では、4万5千円のタバコ代となる。
これは、隠棲している年金生活者にとっては、許容範囲を超えている。止めざるを得ないか、という思いがある。
私は、高校2年、17の時からタバコを吸っている。50年以上になる。タバコについての思い入れは深い。
でも、今日は、眠くなってきた。タバコの続きは、また明日としよう。