九州場所、中日。

曇り。
今場所の中継、ほとんど見ていなかったが、幕内、横綱の土俵入り、ゆっくり見る。
ご当所ということもあり、魁皇への声援、殊のほか凄い。魁皇への声援は、いつもではあるが、やはり、九州、大分出身の千代大海への声援も多かった。準ご当所ということばかりでなく、カド番、しかも、厳しい星の千代大海への、激励プラス労わりの拍手でもあるな、と感じた。
朝青龍の土俵入りも、久しぶりにじっくり見たが、気迫を感じた。”何のかのというヤツはいるが、主役を張っているのは、やっぱり、オレだ”との気迫を。特に、四股が力強かった。美しかった。後半戦、どうなるかは解からないが、先場所同様、突っ走りそうな感じを受けた。
横綱の二番は、完全に格の違いを見せつけた。
朝青龍に、立会い一発、右頬を張られた栃煌山は、それだけで横を向いてしまい、後ろに回られ、送り投げで敗れた。解説の錣山が、言いかけて、言葉を飲み込んでいたが、2〜3年前の朝青龍なら、送り投げなどにせず、豪快なつり落としで、仕留めるところであったろう。
白鵬は、豪快な勝ちっぷりだった。今場所の白鵬、慎重といえば慎重といえるが、横綱らしいゆったりとした取り口を続けていた。負けない横綱としての、真っ当な取り口を。しかし、今日は、違った。鶴竜を、立会い一気に土俵際まで追いつめ、豪快な上手投げで屠った。
鶴竜は、私の贔屓力士の一人である。把瑠都と共に、今や大関候補の先頭を行く力士でもある。力をつけてきた力士ではあるが、まだまだ横綱との力の差は、歴然。これで、2勝6敗。関脇まではきたが、来場所は三役陥落となろう。まだまだ稽古が必要だ。
把瑠都は、日馬富士をつり出しで破る。把瑠都の足が、土俵を踏み越し、物言いがついたが、送り足が認められた。日馬富士の体、完全に土俵の外だったものな。把瑠都は、これで、5勝3敗。それにしても、日馬富士はどうした。これで、3勝5敗。なんとか勝ち越しはするであろうが、大関に上がったころのキレがない。
53回目の対戦となる、魁皇と千代大海は、魁皇が押しだしで勝つ。千代大海、これで、6連敗。勝った魁皇は、何ともいえない顔をしていた。仲間だものな。特に、この二人は、長い間の大関仲間。以前、魁皇が厳しい時期、千代大海が助けていたこともあったものな。引退した栃東などとともに。
カド番の千代大海、おそらく、来場所は関脇に陥落する。本人は、それでも土俵に上がり、大関復帰を目指す、と言っている。6敗し、復帰が難しくなった日に引退する、と言っている。好漢・千代大海、やめておけ。今場所で引退しろ。先場所のブログでも、たしか記したが、なぜか千代大海が好きな私は、そう願っている。
それはともかく、今日の中継の土俵入りから、取り組みまでの間の時間に、ヒゲの伊之助の映像が出てきた。ヒゲの伊之助、涙の抗議の映像が。もちろん、モノクロの時代。伊之助の白くて長いヒゲが、くっきりと際だっていた。
昭和33年秋場所初日というから、今から半世紀も前になる。横綱・栃錦と前頭・北の洋の一戦。立行司・19代式守伊之助の団扇は、栃錦にあがる。が、物言いがつき、検査役の判定は、北の洋の勝ち、となる。ここからだ。私も、この映像、リアルタイムで知っている。
検査役の判定に納得できない、式守伊之助・ヒゲの伊之助の猛抗議が始まる。小兵の伊之助、土俵を叩いて抗議する。その間、12分とも15〜6分ともいわれる猛抗議を。ヒゲの伊之助、涙を流しての猛抗議だ。
だが、判定は、覆らない。伊之助は、この日から後、出場停止処分を受ける。
この時、ヒゲの伊之助、71歳。まだ、相撲協会に定年制がなかったんだ。このこともあってのことであろう、翌年、相撲協会は、定年制を設け、ヒゲの伊之助も、72歳で引退する。
相撲好きにとって、心に残る力士、記憶に残る名勝負は、さまざまあろう。しかし、記憶に残る行司は、ヒゲの伊之助だけじゃないかな。