年寄り割引。

晴れ。
久しぶりに、木場の東京都現代美術館へ行く。
私は、ここのシルバー会員である。いくつかの美術館や博物館の会員になっているが、現代美術館のシルバー会員が、年寄りには、一番優しい。つまり、一番安く、最も特典が多い。なにしろ、年寄りの年会費は、たったの1000円。それで、年会費1万円の賛助会員と同じ特典が受けられる。企画展開催時の、レセプションへの招待がないだけである。
現代美術館では、常設展の他に、たいていは、企画展が二つ催されている。その1回の入場料は、2千数百円となる。それが、年寄り、シルバー会員になれば、1年間を通して、何回行っても、たった1000円なんだから。
ミュージアム・ショップやレストランでも、5%ではあるが割引きになる。この春、レストランの経営が変わり、内装も変わり、単価が少し上がったが、まあ広く、シャレた感じで美味い。ロール・キャベツを食ったら、シルバー会員割引で1425円だった。平常の私の昼飯代としては、少し高いが、ここでは、まあいい。
それはともかく、今の企画展は、レベッカ・ホルン展とラグジュアリー展。レベッカ・ホルン展が、面白かった。副題は、「静かな叛乱 鴉と鯨の対話」、となっている。
彼女は、1944年生れのドイツの作家。私も知らなかったが、日本では初の個展だという。平面、立体、特にモーターを使った機械仕掛けの作品が、多く展示されている。微妙に羽ばたく鳥の羽根、大きなモルフォ蝶、蟹の爪のように動くナイフ、また、大きな壁面に黒い顔料を飛ばしたペインティング・マシーン、機械仕掛けで動いている。
機械仕掛けといっても、ティンゲリーのようなものとは、また異質。
ティンゲリーの作品は、素材には多くの鉄製品が使われ、ギイギイ、ガチャガチャ動くが、その本質は、どこか有機的。人間的な暖か味、情動的、という感じを受ける。それに較べ、ホルンの機械仕掛けの作品からは、素材に鳥や蝶といった有機的なものが使われていても、硬質、ハード・エッジ、無機的な印象を受ける。
それよりも私には、彼女の映画の方が興味深かった。映画は、アメリカ滞在中の頃から撮り始めたそうだが、1970年代初めごろから近年のものまで、40年近くの作品が、上映されていた。8本が、カーテンで仕切られた部屋で、同時に。それが、案外長い。
私は、各部屋チラッとは観たが、結局、「ラ・フェルディナンダ:メディチ邸のためのソナタ」、と題された、1981年制作の85分のものを最後まで観た。フィレンツェのメディチ家の別荘でのことごとが、当然日常からは外れた人々が出てくるんだが、面白い。はるか遠く以前に観て、記憶もおぼろげだが、ブニュエルやアラン・レネのことを少し思った。
その映画の中にも、彼女の作品が出てくる。展示物や小道具としてではなく、映画の中に溶け込んで。初めは、これもチラッと見るつもりであったが、つい引き込まれ、最後まで観てしまった。
ところで、私は、この建物、案外好きである。ただのコンクリとガラスの建物であるが、六本木の国立新美術館なんかより、ずっと好き。
で、途中で煙草を吸うために、2、3度館外へ出た時、何枚か写真を撮った。灰皿のある館外の喫煙所から。それを、数枚載せておく。
上の3枚は、3時半ごろの同じ場所。




これは、その反対側。やはり、3時半ごろ。建物に木場公園の木が、写りこんでいる。

同じ所だが、こちらは、5時半すぎに煙草を吸うために出た時のもの。
レベッカ・ホルンや、ましてや、年寄り割引とは、なんの関係もないが。