無用の用。

晴れ。
NHKの100年インタビュー、というのを見るともなく見ていた。
金子兜太が話していた。90歳。顔に皺がない。母親ゆずりの餅肌なのだそうだ。若いとよく言われるが、男の場合は8掛け、女の場合は7掛けが実年齢だ、と言う。ご本人に関しては、たしかに、そのように見える。
戦時中、トラック島に派遣されていたので、”命”ということを考える、と。
終わりの頃になって、しまった、よそ見しながらでなくよく見ればよかった、と思ったが、あとの祭り。切れ切れにしか、耳に入っていない。
”無用の用”という言葉は、よく出てきたので、残っているが。無用の用の大切さ、ということであろう。俳句もそのひとつ。
戦争は絶対にいけない。地球を護ることの必要性。土の匂い。生きもの。樹木。花の咲き方。この地球、100年後も変わらないようにしないと。というようなフレーズ。
”感ずる”、”同化の姿”、という語もあった。自然に対し自然に感じる、ということであろう。同化の姿は、自分と他者が抱きあうように同化することが大切、ということのよう。
「いい器には、何年たっても、何百年たっても、何千年たっても、新しいものが盛りこめる」、とも言っていた。いい器、俳句という古くからの詩の形式もそのひとつだが、そのいい器に盛りこんだ新しいもの、つまり、金子兜太の句を幾つか拾い出してみよう。
     死にし骨は海に捨つべし沢庵噛む
     わが湖あり日陰真つ暗な虎があり
     自我ぐずぐずとありき晩秋のひかり
     酒止めようかどの本能と遊ぼうか
     蝉時雨夢ばかり見て朝寝して
なお、昨日、一昨日がらみで言えば、金子兜太は、昨年度の文化功労者である。