秋場所・千秋楽。

薄曇り。
やはり相撲は、すごい格闘技だな、と今日の朝青龍と白鵬の取り組み二番を見て思った。
そして、相撲には、やはり伝統が生きてるな、と魁皇と琴光喜の一番を見て、改めて思った。
朝青龍と白鵬の一番、本割と優勝決定戦、共に素晴らしい相撲であった。これぞ相撲、これぞガチンコ勝負、という激しい相撲を取った。新旧両横綱の意地と意地が、真っ向からぶつかり、火花が散った。激しいが、美しさがあった。それ以上に、立派な相撲であった。
まず、本割。これ以上ない鋭い立ち合いをした白鵬は、右四つ、左上手を取るや、朝青龍を一気に寄り切った。土俵を割った朝青龍を上手から投げたが、あれは勢い、仕方ない。白鵬のあの立ち合い、今場所で最高の立ち合いではないか。タイプは違うが、昔の柏戸の、立ち合い一気の寄り、を想わせた。
これで、両者14勝1敗の同星。あと一戦、決定戦となった。この一番も素晴らしかった。
低く立った朝青龍は、左前褌をサッと取り、白鵬に回しを与えない。右前褌もひき、白鵬の胸に頭をつけ、終始攻め続け、右下手からのすくい投げで、白鵬を下す。朝青龍の意地、この一番に賭ける気力が生んだ勝利だと思う。
朝青龍、四場所ぶりの優勝となる。通算優勝回数も、大鵬32回、千代の富士31回につぎ、北の湖と並ぶ24回。なんのかのと言っても、大横綱だ。今場所も、初めのうちは、どうも本調子じゃないな、と思っていたが、10日目に稀勢の里に勝ったあたりから、取り口に迫力が出てきた。気迫を強く感じるようになった。やはり、尋常な相撲取りじゃない。
朝青龍については、先場所でも触れたが、やはり、全盛期の朝青龍とは違う。力は落ちている。充実の度を増している白鵬と較べれば、やはり、苦しい、と言わざるを得ない。だが、ここ一番の集中力、気力は、負けてはいない。今日29歳になったということだが、まだまだやれる。気力が続く限り、気迫を表に出せるうちは。
それにしても、両横綱、いい相撲、立派な相撲を取った。
それにひきかえ、伝統のほうだ。魁皇と琴光喜の一戦のことだ。なんという相撲を取ってくれたんだ、と言いたい。
立ち合い、両者突っ張りあった後、魁皇がいなしたのか、小手に振ったのか、琴光喜が土俵に這い、勝負がついた。相撲協会でも用いられている用語を使えば、無気力相撲であろう。
これで、大関、魁皇は、5場所連続の8勝7敗となる。両者合意の上での相撲、とは言わない。おそらく、琴光喜個人の意思による勝負だろう。相撲の伝統技のひとつである片八百長だ、と見えた。伝統は生きてるな、と私には思えた。しかし、このような伝統を続けていっていいのか、私には疑問だ。
今や、日本人力士の間にだけ、生き残っている伝統だと思う。朝青龍や白鵬に通用するか、日馬富士や琴欧州に通用するか、通用しない。こんなことをやっているなら、横綱、大関どころか、関脇、小結、三役ぜんぶ外国人力士になってもいい。今日の琴光喜の相撲を見て、私はそう思った。
それにしても、今場所も途中休場し、角番記録を更新し続けている千代大海と、毎場所8勝の魁皇は、もう引退したほうがいい。見てられない。美しくない。
実は、私は、この両力士のフアンである。相撲の取り口ばかりでなく、その体型も好きだ。それであるからこそ、もう引退してほしい。どのような分野であれ、引き時は難しいが、この両者は、もうその潮時を過ぎている。つらいことではあるが、フアンであるからこそ、その決断を望む。
鶴竜は、曲者、安美錦をやぶり11勝をあげ、技能賞を獲得した。来場所は三役、立派だ。インタビュウに訥々と真面目に応えていた。好きだな。大関候補だ。
稀勢の里は、把瑠都に左上手から土俵の外へ投げ捨てられて、なんと、負け越した。どうする稀勢の里、巻き返してくれ。頭を使って稽古をしてくれ。そういうしかない。
把瑠都は、12勝、敢闘賞を受賞した。来場所は関脇、一気に大関候補の一番手となる。巨体からの怪力は、よく解る。しかし、なぜ
把瑠都の相撲がこれほど通用するのか、私には解らない。可愛げがあるその人柄には、好感が持てるのだが。
秋場所千秋楽、毎日観ているわけではないのだが、やはり、場所が終われば寂しくなる。