選挙。

晴れ。
30日は留守にする為、期日前投票へ行く。
前回同日比で、事前投票をした人は5割ほど多い、とのことだが、まあ、途切れることなく人が来ている。晩い時間に行ったのだが、一人、二人、と入ってくる。事前投票だから、これが多いという状況なのだろう。
比例区の記入個所の前には、10前後の政党名が書いてあり、こんなにあったのか、と思ったり、略称には、「党」が付くのと付かないのがあるのか、なんて碌でもないことを考えながら、投票した。しかし、今回は、どの党に入れるか、相当迷った。連日の各種マスコミによる調査報道から、今回は、記入ブースの前で迷う人の比率は高いんじゃないかな。「迷う比率」なんて調査は、聞いたことはないが。
投票後、中華屋に行った。そこにあった読売の国際面に、アグラ発のこういう囲み記事があった。
あの秀麗なタージ・マハルの後ろに、大観覧車を作る構想がある、とのこと。タージ・マハルのすぐ後ろを流れるヤムナ河の河川敷に造る、とのこと。
ロンドンのテームズ河畔に10年ぐらい前に造られた高さ百数十メートルの大観覧車・「ロンドン・アイ」のインド版・「アグラ・アイ」を造ることを、アグラ市が計画している、とのことで、高さもロンドンのものと同じ高さ。読売の記者も憤慨しているが、碌でもないことを考えるな、アグラ市は、と私も憤慨する。
「ロンドン・アイ」を初めて見た時には、なんでこんなもの造ったんだ、と思ったが、まあ、テームズ河畔には、他にも新しい建物も建ってるし、まあいいか、とも思った。しかし、アグラの大観覧車・「アグラ・アイ」は、どう考えても、いけない。
タージ・マハルは、ムガール帝国の王、シャー・ジャハーンが、その妃のため、22年もの長い年月をかけて造り上げた壮大な霊廟である。遠く離れたラジャースタンから切り出した白大理石を多くの象に運ばせ、造りあげた、という。左右対称の美、丸いドーム、四方に立つミナレットの壮麗さ、ともかく美しい。
基壇から眺める後ろの光景も美しい。ゆったりと蛇行して流れるヤムナ河の先には何もない。うっすらと霧がかかる向こうは、ただボウと霞んでいるだけ。
こんなところに観覧車を造るなんて、それも、高さ百数十メートルもの観覧車を造るなんて。アグラ市長は、いったい何を考えてんだ、と思う。
経済発展期の国は、本来の古き良さをどんどん壊す。
一時期の日本。古都・京都に京都タワーなんかを造っちゃった。今の中国。北京の胡同なんかバカスカ壊されて、高いコンクリの建物が建てられているし、上海なんか新しいものだらけ。そして、中国を追うインドもまた、「古き良さをぶっ壊す病」に取りつかれている。困ったものだ。ましてや、少し大きい建物はホテルぐらいしかなく、ほとんど土ぼこりの道ばかりのアグラまで。理解に苦しむ。
そんな計画、即刻やめろ、と言いたい。

タージ・マハルは、とても美しい建物であるが、それよりも、誰もがまず驚くのは、その大きさである。美とはほど遠い即物的なもの言いではあるが、まず初めに感じるのは、「デカイな」ということだ。この写真、うまく撮れていないが、基壇の上の黒い点々のようなものが人間。デカさが解る、と思う。
しかし、如何に大きいとはいえ、400年近くも前のもの、何十メートルだろう。この後ろに百数十メートルもの観覧車を建てられた日には、目も当てられない。いや、そんなことより、たとえ10メートルのものでも、いや、何であれダメである。タージ・マハルの後ろには。
アグラの普通の町中は、こういうものである。





アグラの普通の人たちだ。
この人たちの中、生涯に一度でも大観覧車に乗る人、いや、乗ることができる人は、どれほどいるか。おそらく、10人に1人もいやしない。アグラの実情は、そうだ。そんなことは解っている、観光客相手に造るのだ、とアグラの市長は言うだろう。誰がアグラまで行って観覧車なんかに乗るものか。これまた、10人に1人もいやしない。いや、そういう問題以前の問題だ。
名前など知らないが、住民の実情、古都の価値などよく解っておらず、でかい観覧車を造るなんていう今の市長は、次の選挙できっと落ちる。いや、落とさなきゃいけない。
今まで何度も訪れ、思い入れも深いインドの記事を、中華屋でたまたま見たので、今日のブログは、こうなった。
だから、主従二人の追っかけは、お休み。