8月6日。

薄日。
朝、7時40分、起きる。1年を通しこの日以外、この時間に必ず起きる日はない。
8時、NHK「広島平和記念式典」を見る。原爆投下され64年。8時15分、テレビの前で黙祷。
生き地獄・沖縄での組織的抵抗が終わった6月23日、この8月6日、長崎への原爆投下日の9日、そして、ポツダム宣言を受諾、無条件降伏をした8月15日、この4日を決して忘れてはいけない日、胸に刻み込まねばいけない日、と位置づけられている今上天皇と皇后のお二人も、今、NHKの画面を凝視、もの思われているな、と考える。
1945年7月16日、ニューメキシコ州アラモゴードで原爆実験成功。7月25日、米大統領・トルーマン、原爆投下最終決定。8月6日、午前8時15分、前夜半テニアン島から発進した爆撃機・エノラゲイは広島へ原爆投下。上空600メートルで爆発する。
しかし、広島市長・秋葉忠利の今年の挨拶中、「オバマジョリティー」なる言葉には違和感を覚えた。確かに、今年4月のプラハでのオバマの「核廃絶を目指す」という演説は立派なものである。「核兵器を使用したことがある唯一の国として、アメリカには行動する道義的責任がある」との言葉は、米国大統領として、大きく踏み込んだものである。
しかし、それを「オバマジョリティー」なる造語につなげるのは大いに疑問。広島市長・秋葉の気持は分かるが、短絡的、あまりにも安易な「思い」である。このような言葉は、オバマのプラハでの言葉を軽くする。
ロシアとの戦略核削減ものろい歩みだし、英仏中との関係も、これはそれぞれ一筋縄ではいかないだろうし、インドとパキスタンも一旦持ったからには、おいそれと手放さないし、公然の秘密の保有国・イスラエルは、それこそウンという訳がない。さらに、北朝鮮とイランといった「核を持って何が悪い」と子供のようにわめく国もあるし。
さらに私は、エジプト、トルコ、ブラジル、ナイジェリアあたりが、今後よからぬ考えを持つのではないか、と思っている。現実の世界では、オバマの思い、必ずしもマジョリティーではない、と私は考える。だから、違和感。

夕刻、ジュンク堂新宿店へ行き、どうぶつ社ブックフェアを見る。どうぶつ社は、誰もが知る大会社を辞め唐突に小さな出版社を創った男のいわば個人出版社。会社を創り35〜6年、実際に発行しだしてから33〜4年、動物、昆虫や魚の本もあるので生物といってもいいが、その分野に特化した出版活動を行ってきた。
この間、200点弱の資料価値の高い専門書を世に送ってきた。その殆どは、初版のみであっただろう書籍を世に出した。カミさんとアルバイトの女性との3人で。本人もエライが、同走者として共に支えたカミさんもエライ、と私は思う。35〜6年もの間、水商売ともいえる出版業を続けてきたのだから。
年もとったので、自主企画の発行は打ち切るという。ふた月ほど前には、日経の書評欄にも活動休止を惜しむコラムが載った。まあ、在庫もいっぱいあるので、会社自体は続けるが、とのこと。それ故での、ジュンク堂でのブックフェアである。
最新刊にして最後の自主企画本である大場信義著『ホタルの不思議』求める。ホタルの世界では著名な人らしいが、ザッと斜めに眺めて、「ウーン、さほど売れないだろうな」と思う。専門性の高い研究書だ、一般人には。
実は、このどうぶつ社を創り、永年さほど売れない数々の良書を世に問うてきた男、50年近くに及ぶ私の親しい友であり、「志の出版」を続けてきた男でもある。