肩書きの使い方。

晴れ、薄曇り、晴れ。
今日、クリントンが突然ピョンヤンを訪れた。
ヒラリーでなくビルの方、大統領になり損ねた方でなく、大統領だった方、現役の方ではなく、引退した方のクリントン。
この3月、中朝国境付近で捕まり、労働教化刑12年という無茶苦茶な判決を言い渡された、中国系と韓国系の2人のアメリカ人女性記者を取り戻す為に。私人の資格で、と。私人の資格で、といったって、もちろん、米朝両国政府が綿密な折衝を重ねた結果での私人であることは、当然のこと。
初め、元副大統領のアル・ゴアではどうか、あるいは、北朝鮮には何度も行き、顔つなぎのできているニューメキシコの知事ではどうか、といった話もあったそうだが、いずれも北が拒否。ビル・クリントン、つまり、元大統領、となったという。それにしても、北朝鮮は肩書きの好きな国だ。軍将官の写真を見ると勲章も好きなようだが。
金正日とも会談を持った、という。ビル・クリントンが行き、金正日が出てきたとなると、12年の無茶な刑もチャラ、2人の女性記者も帰りのチャーター機に100%同乗ということになろう。が、その飛行機には、「アメリカへひとつ貸し」という無形の土産と、米朝交渉これこれの条件で、というアメリカ政府への言付けも、同時に積み込まれることになろうが。
アメリカ大統領は世界最高の肩書きだが、アメリカの元大統領の肩書きも、リタイア後の肩書きとしては世界最高の肩書きであろう。米朝両者、その利用法に一致点を見出したのであろう。1994年のカ−ターの訪朝もそうであったが、ここぞという時には、元大統領の肩書きが役に立つ。あのブッシュ・ジュニアは別にして(親父さんのブッシュ・シニアは、体調さえ許せば充分使えるが)。
カーターにしろビル・クリントンにしろ大きな肩書の保有者、アメリカが持つ秘密兵器のひとつだな。特に、ビル・クリントンはまだ62、これからも、イランにしろパレスチナにしろ、ここぞという時には十分使える。アメリカの為ばかりでなく世界の為、そして、場合によっては彼自身の為にもなるもの。ノーベル平和賞というおまけが付くこともあろうから。