ブリューゲル「バベルの塔」展。

昔昔のことである。天まで届く塔を建てようとした人々がいた。しかし、神をも恐れぬそんな大それた人間どもの野心は神の怒りを買う。ついに塔は完成しなかった。旧約聖書の物語である。
16世紀のネーデルランドの画家、ピーテル・ブリューゲルは、その「バベルの塔」の物語を精緻に描いた。世に知られるブリューゲルの「バベルの塔」。

都美術館、あの窓のところ。

中に入りチケット売り場の左の柱のところ。

ブリューゲル≪バベルの塔≫。チラシを複写。
オランダ・ロッテルダムのボイマンス美術館所蔵。1568年頃の作、60cm×74.6cm、油彩。
小さな画面に、大きな塔が描かれている。細部まで緻密に。

「ボスを超えて」とある。
そう、ヒレオニムス・ボスこそフランドル、北方ルネサンスの指標であろう。北方、フランドルの奇想の系譜の祖。

ヒエロニムス・ボス≪聖クリストフォロス≫(部分)。1500年頃。

ヒエロニムス・ボス≪放浪者≫(部分)。1500年頃。

ボスが世を去った後に生を受けたブリューゲルも、ボスの影響を受ける。
ブリューゲル≪大きな魚は小さな魚を食う≫。1557年。

都美術館の窓ガラスには、ボスの空想世界の化物が貼ってあった。

会場入り口の横に、このようなものがあった。
大友克洋の「INSIDE BABEL」と記されている。

こういうことのようだ。

大友克洋の線描画。

会場出口には、このようなものがあった。撮影ポイントである。
しかしなー、これが撮影ポイントとは笑わせる。近年の展覧会の撮影ポイント、おしなべて充実してきているもの。
さらにだ。バベルの塔、推定510mはいいとして、それに比較するのに東京タワー333mはないだろう。スカイツリー634mをなぜ出さないんだ。大阪の通天閣108mもどうか。塔ではないが日本唯一のスーパートール、アベノハルカスがあるじゃないか。
音声ガイドもイマイチであった。オフィシャルサポーターとして雨宮塔子が話していたが、ひょっとして名前の「塔」の字がらみで採用されたのかな、と思ったもの。

ところで、ブリューゲルの「バベルの塔」、世界にあと1点ある。
ウィーンの美術史美術館所蔵のブリューゲルの「バベルの塔」である。ウィーンの方が先輩、兄貴分。画面も大きい。
1995年に訪れた時に求めた同館の日本語版の図録から複写する。
美術史美術館所蔵の「バベルの塔」、1563年の作、114cm×155cm。ボイスマンス美術館のものより大分大きい。
ブリューゲルの油彩画、今、約40点が残っているそうだ。その内の12点がウィーンの美術史美術館にある。よく知られる≪雪中の狩人≫も、≪農民の婚礼≫も、≪農民の踊り≫も、≪子供の遊び≫も。
凄い。
時折り、世界の4大美術館と言われる。ルーブル、メトロポリタン、ブリティッシュ・ミュージアム、それにエルミタージュというところに落ちつく。
それに肉薄する美術館がある。私の知る限りでは、マドリードのプラド美術館、アムステルダムの国立美術館、ベルリンの美術館島、ヴァチカンの美術館群、アジアでは北京と台北を合わせた故宮博物院など。
ハプスブルク家のコレクションが土台にあるウィーン美術史美術館も世界4大に次ぐ美術館であること間違いなしである。そう思う。
なお、ブリューゲルの「バベルの塔」展、今、大阪の国立国際美術館に巡回している。10月15日まで。