マダム・イン・ニューヨーク。

インドの中流家庭の主婦がニューヨークへ行く。
ニューヨークに住む姉の上の娘が結婚することになり、その準備というか手伝いのためなんだが、式のひと月以上も前に行く。ビジネスマンの亭主と子供も二人いるのだが、姑も子供は自分が見ているので行ってこい、と言う。家族は後で行くから、と。
シャシという名のこの主婦、気が重いながらもひとりニューヨークへ旅立つ。
というのも、家族の中で自分だけが英語を喋ることができないからなんだ。今時、インドの中流家庭で英語が話せないなんてあるのかなー、と思うが、まあそういうケースもあるのだろう。
ともかく、この映画のヒロイン・シャシ、ニューヨークのイミグレーションからして、ひと苦労。何から何まで。その彼女、「4週間で英語が話せます」、という英会話学校のことを知る。

ごく普通のインドの主婦・シャシ、周りに内緒でその英会話学校へ入る。ニューヨークの大学へ通う姉の二番目の娘だけは知っていて、後押しをしているのだが。
”マダム・イン・ニューヨーク”である。
ごく普通のインドの主婦にとっては、大冒険だよ。世界が変わるかもしれないよ。

『マダム・イン・ニューヨーク』、ガウリ・シンデーという名の若い女性監督の初めての長編作。ガウリ・シンデーなる女性監督、シャレた作品を作った。何げなく見えて、凄い才能。
才能豊かな若い女流監督はともかく、インドの普通の主婦・シャシに扮したシュリデヴィに触れないわけにはいかない。
インドにはべらぼうな美人がいる。
ヘタしたら心臓が止まってしまうんじゃないか、というような美人がいるんだ。心臓が止まるって、見たとたんにってことであるが。
シャシに扮したシュリデヴィもべらぼうなというか何というか、インドでなければという美人。
シュリデヴィ、インド映画史100年国民投票の女優部門で第一位に選ばれた女優だそうである。1963年生まれの50歳と知って、また驚く。

自由の女神がある、エンパイアーステートビルがある、その間にはインドのごく普通の主婦シャシとそのクラスメートがいる。「4週間で英語が話せます」という惹句の英会話学校のクラスメートである。
左から二人目はメキシコから来たおばちゃん、右側の南アジア系の二人の男はインドとパキスタンから、その前に見える若いアジア系の女の子はどうも中国からのよう。左端の男はアフリカの何処かから。静かな男。そして、シャシの後ろの男は、フランスから来た男。ホテルの料理人である。
このフランスから来た男、シャシに惚れるんだ。
「コーヒーを飲まないか」、と言っては、「また今度ね」、と言われたり、「いっしょに歩いても」、と言っても、「またね」、と言われたり。しかし、さすがフランスの男である。「シャシの瞳にはミルク色の・・・・・」、なんてことを言う。
たしかに、シャシの瞳は、誰をも引きずりこむ深い色を湛えている。
シャシの心も揺れる。

左の2枚は、シャシ。得も言えぬ深い色を湛えた瞳。
右端の1枚は、クラスメートと。その左の1枚は、シャシとフランス男。ビルの屋上からマンハッタンのビル群を見ている。ここまでは進んだのであるが。

ニューヨークっ子である姪っ子の結婚式となる。
インドから亭主や子供も来る。姪っ子のお相手の婿さんは白人だ。今のニューヨークではごく普通のことであろう。両家ともごく普通にふるまっている。祝いの席を。
最後に、マサラムービーお決まりの歌って踊ってが少し出てくる。とても洗練された”歌って踊って”である。
ボリウッド、ハリウッドはもとより、ヨーロッパをも唸らせる世界基準の作品を送りだした。